【フランス語】なぜ"savoir"の現在分詞形は"sachant"なのか?

2025/12/17

フランス語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

フランス語の動詞は法(叙法)と時制、人称によって語形が変化します。

これを活用と言い、1つの動詞に於いて単純計算では96通りの活用が存在することになります。

もちろん11つを丸暗記する必要は無く、約9割を占めるとされる規則変化動詞はパターン化することができます。

とはいえ、英語よりも時制の種類が多いフランス語において動詞の学習が大きな山場であることには変わりないかもしれません。


不規則変化動詞のsavoirについて

規則変化動詞と異なり、不規則変化動詞は個々に覚える必要があります。

ただし不規則変化動詞は、日常的な使用頻度が高い語であるとも言えます。英語も同様で、いわゆるbe動詞は主語に応じてam, are, is…と不規則に活用しますが、I am, you are, he is…のようにセットで頭に入ってしまっているのではないでしょうか。

自然と頭に入っていきやすいという点で、そこまで苦手意識を持たなくてもよいかもしれません。

フランス語においても代表的な不規則変化動詞は、etre(英語のbeに相当)やavoir(英語のhaveに相当)等、避けては通れない基本的動詞ばかりです。

今回は、savoir [サヴォワール]という動詞について見てみましょう。

「(情報や事実等を、知識として)知っている」という意味であり、英語におけるknowに相当します。

英語knowも不規則変化動詞の1つであり、三基本形はknow – knew – knownと活用するのでした。

ちなみに、「知っている」という表現を日本語では「面識がある、見知っている」という意味で使うこともあります。

その場合、フランス語では動詞connaîtreを用います。savoirと異なり、経験・体験によって知っているというニュアンスです。

なお英語の場合は、どちらの場合でもknowでカバーすることができます。


savoirの不規則な現在分詞形とは?

さて、今回はsavoirの現在分詞形を取り上げます。

現在分詞形とは「~している」という意味で、形容詞として名詞を修飾したり副詞として動詞を修飾したりする際の形式です。

規則的には、動詞の直接法現在・一人称・複数の活用語尾-ons-antに置き換えることで作ることができます。

 例)chanter「歌う」の現在分詞形:chantant「歌っている」

   ← nous chantons「私たちは歌う」(直接法現在・一人称・複数)

フランス語に於いて現在分詞形の活用は、ほとんどが上の通り規則的に導くことができます。しかし例外が3つだけあり、その1つが今回のsavoirなのです。

savoirの直接法現在・一人称・複数形はsavonsです。規則的であれば-ons-antとして*savantとなるのですが残念ながらそうなりません。

現在分詞形はsachant [サシャン]となります。


なぜsavoirの現在分詞形はsachantなのか?

不規則変化動詞とは言え、不定形savoirの子音-v-が現在分詞形で-ch-の音に変わるというのは不思議ですね。

この変化は、ルーツであるラテン語からフランス語化する過程に背景があるようです。

そもそもsavoirは、ラテン語の動詞不定形sapereに由来します。

本来は-p-という音でしたがフランス語においては母音間の-p-から-v-への変化がしばしば起こりました。

他にcapillum(ラ)⇒ cheveu(仏)「髪」という例もあります。

ラテン語sapereは、現在分詞形がsapiens(対格形sapientem)という形になります。

このsapientemを直接のルーツとし、フランス語史において以下のように変化しました。

from Latin sapientem via /-pj-/ > /ptʃ/ > /tʃ/ > /ʃ/.

ラテン語sapientemから、/-pj-//ptʃ/  /tʃ/  /ʃ/という音の変化を経て。

(出展:en.wiktionary

本来は「サピエンテム」のように「ピ /-pj-/」の音であったのが、途中から「チ /tʃ/」が挿入されて更に-p-が脱落、果ては「シ /ʃ/」へと変音したというわけです。

なぜこのような音の変化が起こったのでしょうか。「ピ /-pj-/」の発音がしづらく、より発音しやすいように変化したのかもしれませんね。

いずれにしても興味深いのは、ラテン語からそのまま現在分詞形を受け継いでいるという点ではないでしょうか。

ラテン語からフランス語への変化において、てっきり動詞の不定形だけ受け継いで活用形はフランス語の中で発展させたのだと思っていました。

ところが今回の例を見る限り、それぞれの活用形もラテン語から受け継いでいる様子が伺えます。

改めてラテン語の影響力や浸透力の大きさが感じられました。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回はフランス語の動詞savoirの現在分詞形について調べてみました。

ラテン語からフランス語への音の変化が背景にあったのですね。

今後も興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。

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様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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