ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
先日『スペリングの英語史 Does Spelling Matter?』という本を読みました。
英語は、綴りと読みの乖離が大きいことが学習者泣かせの一つかもしれません。
現代英語においてなぜこれほどまでの乖離があるのか、英語の歴史をたどることで紐解いていくのが本書です。
また英語の綴りは、私たちのような非母語話者だけでなくネイティブにとっても悩みの種の一つであったようです。
英国や米国において、過去から現代に至るまでに試みられた様々な綴り改革の歴史も垣間見ることができます。
読後、英語史という背景情報が加わることで綴りに対する見方が少し変わったように思います。
著書のサイモン・ホロビン氏はオックスフォード大学の英語学教授なのだそうです。翻訳者の堀田隆一氏も、慶應義塾大学の文学部教授です。
とはいえ内容は堅苦しいものでもなく、ボリュームこそ大きいものの、英語というものを理解する上でおすすめです。
"will not"の短縮形はなぜ"won’t"か?
綴りに関しては、読み方との乖離だけでなく短縮形による違いも気になるところです。
例えば、助動詞"will"に否定形"not"がついた"will not"には"won’t"という短縮形があります。
短縮自体は、"is not" → "isn’t"、"do not" → "don’t"、"can not" → "can’t"のように他にも例があるので珍しいものではありません。
しかし、"will not" → "won’t"の短縮形は元の形からは類推も難しいくらいの変化です。
なぜ、これほどまでの変化が発生しているのでしょうか。
英語版Wiktionaryには、"won’t"の語源に関し興味深い記載があります。
From earlier wonnot, from Middle English wynnot, wilnot, wolnot, wilnat,
かつてのwonnot、中英語のwynnot、wilnot、wolnot、wilnatから
(参照:en.wiktionary)
遡ると、様々な綴りのバリエーションが記録されているようです。
更には以下の記載も。
a contraction of Middle English will not, wil not, wyll not, will noght, wil noht, willi noȝt, wyl nat, wol not, woll not, wole not, wolle not, wol nat, woll nat, etc.,
対訳:中英語will not、wil not、wyll not、will noght、wil noht、willi noȝt、wyl nat、wol not、woll not、wole not、wolle not、wol nat、woll nat等の短縮形、
(参照:en.wiktionary)
数えてみると13通りもの綴りが挙げられており、"will"だけでなく"not"のバリエーションも豊富ですが、いずれにせよこうした異形の中から最終的に"won’t"が正式な綴りとして残って今に至るというわけです。
そもそも、"will"の語源をさかのぼってみると、古英語の時代(およそ449年から1100年頃)の"willan"が、中英語の時代(11世紀中頃から15世紀後半)には"willen、wullen、wollen"等さまざまな形で記録されているそうです。
15世紀半ばに活版印刷技術が広まると、印字によって綴りが統一化されていくわけですが、"will"が採用された一方で"wilnot"は採用されず(逆に"woll"の不採用に対し"wonnot"が採用されて)現代英語における"will"と"won’t"が並立することになったのですね。
ということで、"will not"の短縮形"won’t"は遡れば同じルーツに由来していました。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、"won’t"について調べてみました。
とてもイレギュラーな"will not"の短縮形は、英語の歴史における豊富な綴りの痕跡を今に残すものだったのですね。
今回のように英語の綴りで気になる点がある方は、冒頭でご紹介した書籍『スペリングの英語史 Does
Spelling Matter?』がおすすめです。
歴史を知ることで、少しは英語の綴りに対する苦手意識も無くなるかもしれませんね。