ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
言葉の成り立ち(語源)を知ることは、語彙に対する理解をより深めるうえで大切なことだと思います。
実際に書店では英語の語源辞典や語源をベースとした単語集が多くみられ、語源に対する注目度は高いことが伺えます。
今回は、興味深い語源を持つ英単語を2つ紹介したいと思います。
abroad「海外へ」の語源は、ab + roadにあらず?
abroadは、「海外へ・海外で」という意味の単語ですね。
副詞であり、助詞の「へ」、「で」が含まれていることからわかる通り、前置詞を伴う必要はありません。
I want to go abroad.「海外へ行きたい」(×:to abroad)
I want to study abroad.「海外で学びたい」(×:at abroad)
この単語のルーツは何でしょうか。
「海外」という言葉に於ける「外」のイメージから、接頭辞ab-が浮かんできます。
接頭辞ab-は、absent「不在である(ab「外」+ sent「存在」)」やabnormal「異常な(ab「外」+ normal「正常な」)」等々で見受けられます。
ではabroadは、ab「外」+ road「道路」から成り立つのでしょうか。
残念ながらそうではなく、実はa + broadが語源です。
mid-13c., "widely apart," a contraction of on brode, from Old English on brede, "in width," literally "at wide".
対訳:13世紀半ば、on brode「大きく離れている」の短縮形、古英語on brede「~の幅で」、文字通りには「広く」から。
(参照:Online Etymology Dictionary)
brode(現代英語broad)の意味「広い、広く」から派生した表現だったのですね。
本来は文字通り「広く」という表現だったのが、時代を経て「離れて」となり、「屋外に、家の外に」を経て「国外に、海外に」という意味が派生したのだそうです。
時代とともにabroadの範囲はどんどん広がっていったというわけでした。もしかしたら将来的には「地球外に」という意味もできるかもしれませんね。
abridge「要約する」の語源は、a + bridgeにあらず?
文章などを「要約する」とか、期間などを「縮める」という意味の動詞にabridgeという英単語があります。
類似語にはsummarize「要約する」、shorten「縮める」があります。Weblio辞書が定める語彙力のレベル※によると、summarizeはレベル7、shortenはレベル5の単語であるのに対しabridgeはレベル18とあるので重要度は低いようですが、知っていれば堅い文章の読解やフォーマルな会話において役立つかもしれません。
※レベルが高いほど、頻出かつ重要な単語が厳選されているそうです。
この単語のルーツは何でしょうか?
意味からab + ridgeの分解は考えにくいでしょう。なおridge単体には名詞で「尾根、畝」とか動詞で「(家に)棟をつける、畝状に隆起する」という意味があります。
ではa + bridgeでしょうか。bridge単体はご存じの通り名詞で「橋」という意味ですね。また動詞で「橋を架ける、(空間を)埋める」なんて用法もあります。
文中で重要な個所だけを、橋を架けるようにつないで「要約する」がルーツということでしょうか。
残念ながら、そうではありません。
from Old French abregier, abrigier "abridge, diminish, shorten" (12c., Modern French abréger), from Late Latin abbreviare "make short," from Latin ad "to" + breviare "shorten," from brevis "short, low, little, shallow".
対訳:古フランス語abregier、abrigier「要約する、減らす、短縮する」(12世紀、現代フランス語abréger)から、後期ラテン語のabbreviareに由来し、ラテン語のad「~へ」+ breviare「短くする」から成り立つ、brevis「短い、低い、少ない、浅い」の派生。
(参照:Online Etymology Dictionary)
成り立ちからはa + bridgeが由来と言えそうです。しかしbridgeの部分は「橋」を意味する単語とは全くの無関係であり、もとはラテン語breviare「短くする」に由来していたのです。
ところで、英語にはabbreviate「簡潔にする、省略する」という単語もあります。
実はabridgeとabbreviateは同じラテン語にルーツを持ち、異なる綴りで現代英語に残っている二重語なのです。
前者は上の引用の通り、フランス語abregier、abrigierを経由して英語に入りました。たいして後者は直接ラテン語から英語に入りました。別々に取り入れ、微妙に意味も異なって用いられたため現代でも住み分けができているというわけです。
綴りがラテン語で-vi-であったのがフランス語で-ge-となっているのは、フランス語の発達におけるよくある変化のようで、ほかにもassuage(ラテン語assuavidare「和らげる」)やdeluge(diluvium「氾濫」)という例があります。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、abroadとabridgeという単語のルーツを調べてみました。
単語の丸暗記に終始せず、語源を遡ることでabroadのように意味のイメージが更にクリアになったり、abridgeとabbreviateのように意外な二重語に気づいたりという新たな発見があるものですね。
今後も興味深い発見があれば、当ブログにて紹介していきたいと思います。


