ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
ヨーロッパの諸言語を学んでみると、指大辞や指小辞という接辞がよく使われていることに気づくと思います。
指大辞とは、元の単語に「大きい」という意味を加えて新たな単語を派生させる接辞です。
例えばイタリア語で"libro"は「本(英:book)」という意味ですが、指大辞"-one"がついた"librone"は「大きな本(=大判の本)」となります。
なお、興味深い例が"millione"「百万(英:million)」です。この語尾"-one"とは実は指大辞であり、"mille"「千(英:thousand)」+ "-one" = "millione"という語源なのです。
反対に指小辞は、対象に「小さい」「可愛らしい」という意味を与えます。
例えば"libro"に指小辞"-etto"がついた"libretto"は「小さな本、小冊子」という意味になる、というわけです。
イタリア語"pulce"と"pulcino"の関係とは?
イタリア語における指小辞は、上で挙げた"-etto"のほかに"-ello"や"-ino"があります。
"-ello"を持つ語の一つに"castello"「お城(英:castle)」があります。
なお、この語はラテン語"castrum"「砦」に指小辞がついた"castellum"に由来しているのですが、派生元の単語は現代イタリア語には残っていません。
もう1つの指小辞"-ino"ですが、例えば以下の単語があります。
pulcino「ひよこ、ひな」
イタリア語が分からなくても、"pulc" + 指小辞"-ino"だと考えると「小さい○○」=「ひよこ」だと推測できそうです。
ひよこは鶏のひなですので、元の語"pulc"とは「鶏」という意味でしょうか?
ところが、辞書を紐解いてみると"pulc"に最も近い場所の見出し語は"pulce"が見つかるものの、その意味は「ノミ(英:flea)」だとありました。
"pulcino"とは本来「小さなノミ」?
"pulce"が「ノミ」であるとすれば、指小辞がついた"pulcino"は「小さなノミ」が原義ということになりそうですが、なぜ「ひよこ、ひな」を意味する語なのでしょうか。
その謎を探るべく、両者の語源を紐解いてみたいと思います。
まずは、"pulce"「ノミ」から。
From Latin pūlicem, from Proto-Indo-European *plúsis (“flea”).
対訳:ラテン語pulicem、印欧祖語*plúsis「ノミ」から。
(出展:en.wiktionary)
続いて、"pulcino"「ひよこ」の語源はどうでしょうか?
From Late Latin pullicēnus, pullicīnus, diminutive form of Latin pullus (“chicken; young animal”).
対訳:後期ラテン語pullicenus、pullicinus、ラテン語pullus「鶏;動物の子供」の指小形から。
(出展:en.wiktionary)
ルーツを紐解いてみれば一目瞭然であり、その語源は全く異なります。
"pulcino"「ひよこ」とは、"pullus"「鶏」に指小辞がついた形に由来しており、つまり原義は「小さな鶏」ということになります。
偶然(?)にも指小辞がついた結果、あたかも"pulce"「ノミ」の指小形のように見えてしまったというわけでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、イタリア語"pulce"「ノミ」と"pulcino"「ひよこ」について調べてみました。
指小辞はイタリア語に限らず、フランス語やスペイン語などのラテン系言語はもちろんドイツ語(ゲルマン系)やポーランド語(スラヴ系)など、ヨーロッパの幅広い言語で用いられる機能です。
色々な言語で調べてみると、他にも面白い発見があるかもしれませんね。