ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
今から十数年前、中学校で英語を学び始めた私が次に触れた外国語はイタリア語でした。
とはいえ本格的な学習書に手を出したわけではなく、最初は旅行会話集でした。
具体的な旅行の計画が無かったにも関わらず冒頭から丁寧に読みました。
特に印象的だったのが鉄道でストライキ(スト)が起こった時のシーンです。
最近の日本ではまず珍しいストがイタリアでは「名物」と称され度々発生するという点もさることながら、ストライキのイタリア語"sciopero" [ショーペロ]が何とも印象的で頭に残ったのです。
当時、ストライキに遭遇したらどうしようと会話集を読みながら震えたものの、その後1度だけ訪れたローマやナポリでは幸いにも支障なく過ごすことができました。
ところで日本で言われる「ストライキ」は英語"strike"からの借用ですが、イタリア語"scipero"のように言語によって表現が異なるのだと思います。
今回はいろいろな言語での「ストライキ」を調べてみました。
英語"strike"
まず日本の「ストライキ」という表現の元になった英語"strike"から。
原義は動詞「打つ、ぶつ」や名詞「打撃」という意味ですが、そこから「(野球における)ストライク」や「ストライキ」が派生しています。
The meaning "refuse to work to force an employer to meet demands" is from 1768, perhaps from the notion of striking or "downing" one's tools, or threatening or coercive action,
対訳:「雇用主へ要求を通すために労働を拒否する」という意味は1768年からで、恐らくは道具を叩く・降ろす、または脅す・強制するという行為のイメージに由来するものと思われる。
(出典:Online
etymology dictionary)
賃上げなどを訴える行為は雇用主にとっては打撃かもしれませんが、労働者の権利としてしっかりと声を上げていくべきですね。
イタリア語"sciopero"
冒頭でも取り上げたように、「ストライキ」はイタリア語で"sciopero" [ショーペロ]です。
イタリア語は多くの語が末尾から二番目の母音に強勢があるので、最初の母音を強く発音するという点でも頭に残る単語です。
この単語は動詞"scioperare"「ストライキする」からの名詞化に由来しますが、動詞の方はラテン語の*exoperāreがルーツだそうです(参照:en.wiktionary)。
語頭の"ex-"は「前の」「外の」「否定」という意味の接頭辞ですが、この場合は「外の」または「否定」の用法でしょう。
"operare"は「行動する、働く」(英語"operate"と同語源)という動詞であることから、"ex-"と合わせて「仕事をしない」というのが原義となります。
カタルーニャ語"vaga"
スペイン第二の都市バルセロナを中心として話される言語カタルーニャ語では「ストライキ」を"vaga" [バーガ]と言います。
動詞"vagar"の名詞形に由来するとのことですが、動詞"vagar"は「歩き回る、うろつく」というような意味です(参照:en.wiktionary)。
労働者が権利を求めて「歩き回る」ことからきているのでしょうか。
この単語は更に遡るとラテン語"vagari"「歩き回る、うろつく」にルーツがありますが、同語源の単語に英語"vague"「ぼんやりした、あいまいな」があります。
うろつく様子から一方は「ストライキ」、他方は「あいまいな」という意味に分かれているのは面白い派生ですね。
フランス語"grève"
最後に紹介するのは"grève" [グレーヴ]、フランス語で「ストライキ」を指す語です。
この単語の由来は諸説あるようですが一説によると広場の名前から取られたそうです。
Named after Place de Grève on the banks of the Seine in Paris (now Place de l'Hôtel de Ville), where unemployed workers would gather. Place de Grève means “flat area covered with gravel or sand”.
対訳:パリのセーヌ川沿いのグレーヴ広場(現在のオテル・ド・ヴィル広場)にちなむ。そこには失業した労働者が集まったものでした。グレーヴとは元々、「砂利や砂で覆われた平らな場所」を意味します。
(参照:en.wiktionary)
グレーヴ広場の現在の名称オテル・ド・ヴィルは「市庁舎」という意味です。
職を失った労働者が、求職や行政への不満を訴える為に市庁舎前に集まったのでしょうか?
その由来はフランス語版Wikipediaにて解説されています。
それによると昔、この一帯はセーヌ川に面した砂州で、船の荷降ろしが頻繁に行われていたそうです。
木材や小麦、ワインなどの物資が荷揚げされる重要な港となり、市場の設置も認められると一帯はグレーヴ広場と名付けられ発展しました。
それだけ活発な取引があれば仕事も簡単に見つかるという事で、失業者が集まる場所でもありました。
つまりフランス語の"grève"「ストライキ」とは本来「賃上げ等のために労働者が団結し仕事をやめること」ではなく、「仕事を求めてグレーヴ広場に立つ」という意味だったのでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は4つの言語における「ストライキ」の表現を調べてみました。
英語 strike
イタリア語 sciopero
カタルーニャ語 vaga
フランス語 grève
言語によって相当する単語も全く異なりますが、ルーツを調べてみると興味深い発見がありますね。
今後もこうした発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。