外国語の「卵」は数や性別に要注意?

2024/02/19

単語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

手軽な食材でありながら豊富な栄養素を含んだ「卵」は茹でても焼いても美味しく食べることができますが、日本では生で食べることも一般的ですね。

今回はそんな「卵」に関して調べてみたいと思います。


全てのルーツは印欧祖語にあり!?

まずはいくつかの言語で「卵」を意味する単語を調べてみましょう。

 1.英語      egg [エッグ]

   ドイツ語   Ei [アイ]

 2.フランス語   œuf [ウフ]

   イタリア語  uovo [ウオヴォ]

 3.チェコ語    vejce [ヴェイツェ]

   ポーランド語 jajko [ヤイコ]

上に挙げた複数の言語は、それぞれ1がゲルマン系、2がラテン系、3がスラヴ系と異なる系統の言語であり語形もあまり似ていませんが、遡れば全て同じ祖語にルーツがあると考えられています。

それが印欧祖語の*hōwyómです。

あくまで現代のいろいろな言語の「卵」から遡って再建された形ではあるものの、1つのルーツから広い地域に渡って影響を与えているというのはすごいですね。


鶏が先か卵が先か?

そもそも「卵」は様々な生物が産み落とすものですが、一般的に「卵」という場合は鶏の卵(鶏卵)をイメージします。

これはやはり我々にとって食用として大変身近な「卵」が鶏卵だからなのでしょう。

また、鶏と卵の関係を使って物事の因果をめぐるジレンマを表す言葉に「鶏が先か卵が先か」というものがあります。

どちらが先かは様々な研究に任せるとして、言葉の面で言うと答えは「鶏が先」と言えるかもしれません。

英語版Wiktionaryにて印欧祖語*hōwyómの語源は以下の通り解説されています。

derivative of *héwis (“bird”). 【対訳:*héwis (“bird”) からの派生】

(参照:en.witktionary

このように、印欧祖語の*héwis「鳥」から*hōwyóm「卵」が派生したと考えられています。


フランス語とイタリア語は複数の「卵」に要注意!

ヨーロッパの言語は対象の数に応じて、単数形と複数形を使い分けることはご存じの通りです。

スロヴェニア語のように両数(対象の数が2の時)という形を持つ言語もあります。

単数形から複数形への変化の仕方は言語によって様々ですが、フランス語の場合は基本的に単数形の語尾に"-s"をつけて複数形とします。英語と似ていますね。

上で見たようにフランス語の「(単数の)卵」は"œuf"、では複数形は"-s"をつけて"œufs"とすればよいことになります。

ただし単数形と複数形では発音が異なるので要注意。以下をご覧下さい。

 単数形 œuf /œf/ [ウフ]

 複数形 œufs /ø/ []

フランス語では末尾の子音はたいてい発音されないため、語尾に"-s"があろうと発音上は単数形と同じケースが多いのですが、この"œuf"に関しては単数形で発音される末尾"-f"が複数形になると、"-s"ともども脱落してしまいます。

また、カタカナでは[]と書くほかはない母音"œ"("o"と"e"の合字)も単数形と複数形では発音が異なっているので要注意です。

続いてイタリア語の場合はどうでしょう。

フランス語と同じラテン系の言語ですが、単数形から複数形への変化の仕方は異なります。

イタリア語では基本的に末尾に母音が別の母音に変化します。

例えば"anno"「年」の複数形は"anni"であり、"-o"を"-i"にするという具合です。

ところが"uovo"「卵」の複数形は"-o"を"-i"として*uoviではありません。

 単数形 uovo [ウオヴォ]

 複数形 uova [ウオヴァ]

複数形の語尾は"-a"となっています。

そもそも直接のルーツとなったラテン語では「卵」を"ovum"と言い中性形の名詞でした。

ラテン語で中性形の名詞は単数"-um"から複数"-a"へと変化するパターンであり、"ovum"の複数形も"ova"となります。

時代を経てイタリア語には中性名詞という分類は無くなり男性名詞に吸収されましたが、「卵」に関してはラテン語における変化が残り、このような不規則変化となっています。


スペイン語とポルトガル語は「卵」の性に要注意!

上で名詞の性について少し触れました。

フランス語"œuf"やイタリア語"uovo"は直接的にはラテン語"ovum"から派生していますが、今では中性名詞が無くなり男性名詞として扱われます。

これはスペイン語やポルトガル語でも同様で、「卵」は男性名詞です。

 スペイン語  huevo [ウエボ]

 ポルトガル語 ovo [オヴ]

ところがつづりが変わって女性名詞の「卵」も存在します。

 スペイン語  hueva [ウエバ]

 ポルトガル語 ova [オヴァ]

それぞれ語末の"-o"が"-a"に変わっています。

スペイン語とポルトガル語において男性名詞の方は鶏などの一般的な「卵」を、女性名詞の方は「魚卵」を指すという違いがあります。

もともと女性形の"hueva / ova"は、ラテン語の中性名詞"ovum"「(単数の)卵」の複数形"ova"に由来します。

ラテン語では複数形の"ova"がスペイン語やポルトガル語における女性名詞の単数形として扱われたというわけですが、たらこ等のように複数の小さな卵が集まっている魚卵が複数形のイメージとリンクしたのかもしれませんね。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は、外国語の「卵」について調べてみました。

昔から広く食用とされ馴染み深い「卵」ですが、外国語での表現においては数や性の区別について注意が必要ですね。

今後も、興味深い学びがあれば当ブログで紹介していきたいと思います。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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