ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
先日、NPRというニュース記事配信のサイトにおいて興味深い話を見ました。
Lost
in translation: 4 perfect words that have no English equivalent
タイトルは日本語で「翻訳に困る、英語に完全な同義語が存在しない4つの単語」です。
記事はこちらからご参照頂けます。
ずいぶん前になりますが、日本における物を大切に使う精神とそれを表す言葉「もったいない」が海外で注目を浴びたことがありました。
「もったいない」を海外の言語で翻訳しようにも完全に一致する単語が無く、"Mottainai"として英語圏でも取り入れられたそうです。
言葉の成り立ちは土着の文化や歴史からも大きな影響を受けますから、言語間で完全に一致する表現が存在しないことは当然ですが、こうした点が外国語学習の楽しさでもあります。
NPRの記事では、具体的に4つの非英語圏の単語が取り上げられ、その定義を紹介してくれています。
記事の一例を紹介「霧を取り去る人」とは?
完全に一致する英単語が存在しない単語の一例として、記事から"Débrouillard" [デブルィヤール]というフランス語を紹介してみましょう。
この単語は、"dé"(「除去、否定」を表す接頭辞)+ "brouillard"(「霧、もや」を表す名詞)で構成されていることから分かる通り、直訳すれば「霧を取り去る人(もの、こと)」と言えるでしょう。
しかし、その意味は以下のように発展しているようです。
The closest thing in English would be the idea of somebody who is resourceful, who's creative, figures a way through the fog or through the confusion and just gets to results, is efficient.
対訳:英語において最も詳細な表現は、「機知に富み、創造的で、もやや混乱をくぐり抜ける道を見つけ出し結果にたどり着く、有能な人」
(参照:www.npr.org/2023/03/11/1162340949)
見通しの悪い「霧、もや」の中をくぐり抜け(取り除きながら)進んでいくのは簡単なことではありません。
そこから発展的に「機知に富み、有能な」という意味もできあがったと言えるでしょう。
プログレッシブ仏和辞典(第2版)によれば「要領がよい人、機転の利く人」という意味が見つかりました。
ちなみに、英語にも"defog、demist"という単語が存在します。
それぞれ"de"「除去」+"fog
/ mist"「霧、もや」の組み合わせであり、成り立ちはフランス語"débrouillard"と同じです。
しかし、あくまで「霧を取り除く、曇りを取る」という単純な意味でしかありません
英語において、"débrouillard"と同義語にはならないのでご注意を。
ドイツ語の動詞"weihnachten"とは?
さて今回の記事を読んでいて思い出したのが、私が大学のときに学んだドイツ語のある表現です。
ドイツ語には"weihnachten" [ヴァイナハテン]という動詞があります。
名詞形は"Weihnachten"「クリスマス」で、シーズンが近づけば"Frohe Weihnachten!" [フローエ・ヴァイナハテン]「メリークリスマス!」と言うメッセージや挨拶が出てきます。
では、この動詞形"weihnachten"とはどのような意味なのでしょうか?
ドイツ語版Wiktionaryによれば、その意味は以下の通りです。
bald Weihnachten werden, auf das Weihnachtsfest zugehen (wobei sich eine weihnachtliche Atmosphäre ausbreitet)
対訳:もうすぐクリスマスである、クリスマスが近づいている(そのためにクリスマスらしい雰囲気が高まっている)
(参照:de.wiktionary)
日本でもクリスマスシーズンは年末近くということもあり、うきうきした気分が高まる時期だと思います。
ドイツ語ではその様子を"weihnachten"という動詞一語で表現できるというわけです。
英語"Christmas"には動詞の用法は無く、完全に一致する表現はありません。
この興味深い単語は、詩の一節が初出だとのことです。
Es handelt sich um eine Wortschöpfung Theodor Storms aus seinem 1862 entstandenen Gedicht »Knecht Ruprecht«
対訳:これはテオドール・ストルムスによる 1862 年の詩「クネヒト・ループレヒト」からの造語です。
(参照:de.wiktionary)
ちなみに、この動詞は主語に"ich"「私が」や"du"「君が」を置くことはできません。
天気の表現(例"es regnet"「雨が降る」)のように形式的な主語"es"を用いて、"es
weihnachtet"「クリスマスが近づいている」のように表現します。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、NPRの記事から「英語に完全な同義語が存在しない4つの単語」の紹介と、昔覚えたドイツ語の動詞"weihnachten"を紹介しました。
それぞれの言葉が持つ文化的、歴史的な背景から必ずしも完全に一致する外国語が存在するわけではありません。
ただ、それによりその言葉が話される地域の文化や歴史も垣間見ることができ、それこそが外国語学習の醍醐味と言えるかもしれません。
今後も興味深いトピックがあれば当ブログで紹介していきたいと思います。