ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
語学というのは特定の言語を集中的に取り組むというのがほとんどだと思いますが、時にはあえて他の言語に触れてみるのも気分転換になると思います。
今回の記事では英語・ドイツ語・フランス語の3言語における、「今日」の表現方法について調べてみました。
英語"today"
英語で「今日」は"today" [トゥデイ]ですね。
"today"「今日」のルーツは予測がつきやすいかもしれませんが、"to"と"day"から成る複合語です。
From Middle English today, to-daie, todæig, from Old English tōdæġ, tō dæġe (“today”, literally “on [the/this] day, [this] day forward”),
対訳:中英語today, to-daie、古英語tōdæġ, tō dæġe(「今日」、原義は「(その/この)日に、(この)日に向かって」)
(参照:en.wiktionary.org/wiki/today)
今でこそ"today"の1語にまとめられているものの、かつては"to-daie"のようにハイフンがあったり"to"と"day"で2語に分かれていたりと、その変遷が伺えますね。
ちなみに、前置詞+"day"「日」による複合語で「今日」の表現は他にオランダ語やスウェーデン語など、英語と同じゲルマン系の言語にも見られます。
オランダ語 vandaag = van(英of)+ daag(英day)
スウェーデン語idag = i(英to)+ dag(英day)
ドイツ語"heute"
ドイツ語では「今日」を"heute" [ホイテ]と表現します。
余談ですがドイツ語はつづりと音がほぼほぼ一致しており、基本的にはローマ字読みが可能です。
数少ない例外が"eu"というつづりで、この時「エウ」ではなく「オイ」のように読みます。
ちなみにドイツの国名"Deutschland"にも、"eu"が含まれています。
話が逸れましたが、ドイツ語"heute"のルーツは何でしょうか。見た目からは英語"today"とは毛色が異なりそうです。
From Middle High German hiute, from Old High German hiutu, a contraction of earlier *hiu tagu, from Proto-West Germanic *hiu dagu, from Proto-Germanic *hinō dagō (“on this day”, from *hiz + dagaz).
中高ドイツ語hiute、古高ドイツ語hiutu、初期*hiu taguの縮約形、西ゲルマン祖語*hiu dagu、ゲルマン祖語*hinō dagō「この日に」、*hiz + dagazから)
(参照:en.wiktionary.org/wiki/heute)
ドイツ語"heute"も英語"today"とパーツこそ異なるものの、元は2語が1単語に縮約した形だということが分かります。
2語の内、後半部分は"tagu, dagu…"がルーツであり、その意味は英"day"と同じですね。
一方、前半部分の"hiu, hino…hiz"は英"this"に相当することから、「この日」が縮まった形がドイツ語"heute"「今日」になったと言えます。
英語圏でも古英語の時代には、"heute"と構造を同じくする単語"hēodæġ"もあったようです。
しかし時代を経て"today"の方が英語圏では選ばれたということですね。
フランス語"aujourd’hui"
最後にフランス語における「今日」の表現です。
フランス語では"aujourd’hui" [オジュルドゥイ]と表現します。
これまで取り上げた英語"today"やドイツ語"heute"と比較すると、つづりの長さが際立っています。
またフランス語の「今日」は、同じラテン系言語の代表であるイタリア語やスペイン語と比べても特徴的です。
イタリア語 oggi [オッジ]
スペイン語 hoy [オイ]
またまた余談ですが、小学館の月刊ファッション誌"Oggi"は、イタリア語の「今日」が由来です。更に、やはり小学館の月刊ファッション誌"Domani" [ドマーニ]はイタリア語「明日」という意味です。
話を戻して、フランス語の「今日」はなぜこのような表現になったのでしょうか。
ルーツをたどると、元は複数の単語から成ることが分かります。
univerbation of au + jour + de + hui, literally “on the day of today”
対訳:au + jour + de + huiの融合形、原義は「今日というその日に」
(参照:en.wiktionary.org/wiki/aujourd’hui)
英語"today"やドイツ語"heute"が2語の複合(縮約)形だったのに対し、フランス語は倍の4単語の融合形というから驚きです。
また興味深い点は、元の単語の1つ"hui"が英"today"に相当する事からも分かるように、「今日」という意味を内包しているということです。
この"hui"はラテン語"hodie"「今日」に由来します。イタリア語"oggi"やスペイン語"hoy"も、やはり由来はラテン語の"hodie"です。
つまりフランス語は"hui"「今日」単独では無く、原義「今日というその日に」のように何とも冗長な方法で「今日」を表現しているということになります。
フランス語"aujourd’hui"の由来とは?
フランス語では何故「今日」を、「今日というその日に」というように表現するのでしょうか?
1節によればフランス語の音に関係がありそうです。
c'est au XIIe siècle que les habitants d'Île-de-France commencent à dire «au jour d'hui», en quatre mots, «trouvant sans doute que leur hui était trop court, ou ressemblait un peu beaucoup à oïl, notre oui», explique le lexicologue.
対訳:イル・ド・フランス※の住民が「今日」を4単語で表現し始めたのは12世紀頃のことです。語彙学者は、恐らく単語huiの音があまりに短いことやoïl(oui)に似ていた為だと説明しています。
※訳者注:パリを中心とした地域。
(参照:«Aujourd'hui»,
un pléonasme très français)
フランス語などラテン系の言語は子音"h"を発音しないので、"hui"は [ウィ]のような音になります。
英語"today" [トゥデイ]やドイツ語"heute" [ホイテ]に比べると確かに短く、聞き逃してしまいそうですね。
また、引用中の"oïl(oui)"[オイル(ウイ)]は、英語"yes"「はい」に相当しますが、"hui"との音の類似性からやはり聞き間違えてしまいそうです。
こうした背景から生まれた"aujourd’hui"は原義「今日というその日に」こそ冗長に聞こえますが、フランス語ならではの工夫による表現と言えますね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、英語・ドイツ語・フランス語におけるそれぞれの「今日」を表す単語について調べてみました。
地理的にも近い地域で公用語として話される3言語ですが、その表現方法は三様で面白いですね。
語学を長く楽しむためには、時には他の言語に寄り道してみるのも継続する上で一計かと思います。
過去には「自己紹介」の仕方を英語、仏語、独語で比較してみたことがあります。