英語「骨」とドイツ語「脚」の関係とは?語源を元に解説します!

2021/06/11

英語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

英語とドイツ語は、ゲルマン語派という同じ言語グループに属し、ゲルマン祖語という共通のルーツを持っています。

そのため、似たような単語がいくつも見つかります。

ただルーツが同じとは言え、その意味するところは英語とドイツ語で異なっている単語も存在します。

以前、その一つの例として英語"deer"「鹿」という名詞について調べた内容を紹介しました。

今回はその第弾として、ある単語を調べてみようと思います。


英語"bone"「骨」とドイツ語"Bein"「脚」の関係とは?

今回取り上げるのは、英語"bone" [ボーン]とドイツ語"Bein" [バイン]という単語です

それぞれの単語は"bone"が「骨」、"Bein"が「脚」という意味の名詞です。

2つの単語はとてもよく似ており、関連性が伺えます。

一方で、その意味は英語が「骨」であるのに対し、ドイツ語は「脚」と異なります。

そこでルーツを遡ることで、この単語の関連性や意味が異なる理由を探ってみようと思います。


英語"bone"の語源は?

まずは"bone"の語源を"Online Etymology Dictionary"で調べたところ、以下の情報が得られました

Old English ban "bone, tusk, hard animal tissue forming the substance of the skeleton; one of the parts which make up the skeleton," from Proto-Germanic *bainan (source also of Old Frisian and Old Saxon ben, Old Norse bein, Danish ben, German Bein). Absent in Gothic, with no cognates outside Germanic (the common PIE root is *ost-); the Norse, Dutch, and German cognates also mean "shank of the leg," and this is the main meaning in Modern German, but English seems never to have had this sense.

やはり、ドイツ語"Bein"とは共通のルーツを持っているようです。

ゲルマン祖語の"*bainan"から、古英語期の"ban"を経て現在の形"bone"に至ったことが分かります。

ただ、古英語の頃から「骨」または「牙」、「骨格を構成する部分」などを意味する名詞であったようです。

また、他のゲルマン系の言語(現代オランダ語や現代ドイツ語)が「脚」を主な意味としているのに対し、英語においては「脚」という概念が古くから全く無かったともあります。

"bone"はその意味において、とても興味深い謎がありそうです。


ドイツ語"Bein"の語源は?

今度はドイツ語"Bein"の語源をドイツ語版wiktionaryで調べたところ、また違った角度から情報を得ることができました。

Mittel- und Althochdeutsch bein, belegt seit dem 8. Jahrhundert. Die Herkunft des altgermanischen Wortes ist unklar. Die ursprünglichere Bedeutung ist „Knochen“ (vergleiche englisch bone → en), die Bedeutung der unteren Extremität ist im Althochdeutschen bezeugt. Zu beachten ist, dass Bedeutung [1] in einigen Regionen (zum Beispiel schwäbisch-alemannischer Raum) nicht zu finden ist. Dort heißt die gesamte Gliedmaße Fuß. Andernorts (zum Beispiel ostmitteldeutsch) wird dagegen auch der Fuß Bein genannt.

もともとの意味は英語と同様「骨」であったのが、時代を経て「下肢」という意味が見られるようになったというのです。

ちなみに、ドイツ語と一口にいっても地域によって表現が異なり、ある地域では「手足」をまとめて"Fuß"(標準ドイツ語で「足」、英語の"foot"に相当)と言ったり、"Bein"という単語が「脚」ではなく「足」を指したりしていることもあるそうです。

以上のことから、大陸のゲルマン系言語(現代オランダ語や現代ドイツ語など)は、もともとの「骨」という意味から時代を経て「脚」へと意味が変わっていったものの、海を渡った英語では元の意味「骨」を保ち続けたことで、同じ語源でありながら意味が分かれていったのではないでしょうか。


英語の"leg"とドイツ語"Knochen"について

ここまで、同じ語源を持つ英語"bone"とドイツ語"Bein"について調べてきました。

今度は逆に、英語で「脚」を意味する単語"leg" [レッグ]と、ドイツ語で「骨」を意味する単語"Knochen" [クノッヘン]について調べてみましょう。

こちらは単語の見た目も違うので、ルーツも異なる単語だと思われます。

実際はどうなのでしょうか?

まずは英語"leg"について、"Online Etymology Dictionary"にて以下のように解説されています。

late 13c., from a Scandinavian source, probably Old Norse leggr "a leg, bone of the arm or leg," from Proto-Germanic *lagjaz (cognates Danish læg, Swedish läg "the calf of the leg"), a word with no certain ulterior connections. Perhaps from a PIE root meaning "to bend" [Buck]. For Old Norse senses, compare Bein, the German word for "leg," in Old High German "bone, leg" (see bone (n.)). Replaced Old English shank (n.), itself also perhaps from a root meaning "crooked."

どうやら、ゲルマン系の中でもスカンディナビア(北欧)にルーツがあるそうで、デンマーク語"læg"、スウェーデン語"läg"と関連性が見受けられます。

その語源はインド・ヨーロッパ祖語で「曲がった」という意味を持つ語に行き着くとの事から、どちらかと言えばひざの「関節部分」に昔はフォーカスがあったのかもしれません。

続いて、ドイツ語"Knochen"はどうでしょうか。

今回は、ドイツ語版よりも英語版wiktionaryの方に詳細な由来の開設があったので、以下に紹介します。

From Middle High German "knoche", from Old High German "knohha", from Proto-Germanic "*knukô" (bone, joint). Compare Dutch "knook" (bone), "knokkel" (knuckle), "knekel" (bone (of a dead person)), English "knuckle", Danish "kno" and Swedish "knoge" (both (knuckle)).

ゲルマン祖語"knukô"「骨、関節」がルーツであり、地理的に近いオランダ語に同語源の"knook"という名詞が見受けられます

興味深いのは、ドイツやオランダのような大陸から海を隔てたイングランドや北欧では、この語源に由来する単語は、「指の関節、拳骨」という意味に変わっている点です。

(例:英語"knuckle"、デンマーク語"kno"、スウェーデン語"knoge"

現在のドイツのあたりから同心円状に単語が伝播していく過程において「骨」から「指の関節、拳骨」という意味に変化し、距離的に離れたイングランドや北欧で定着していったのかもしれないですね。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は、英語"bone"「骨」とドイツ語"Bein"「脚」という2単語について調べてみました。

同じルーツを持つ単語とは言えど、地理的な位置関係や歴史によって現代の用法や語彙が変わってくるというのは面白いですね。

ドイツ語を学び始めると、英語と似た単語がある!と気づかされるのですが、意味や用法では英語と異なっていることも多々あるので注意が必要です。

ただ、個人的にはそこがドイツ語を学ぶ際に楽しめる点なのではないかと思っています。

ドイツ語を学ぶことで英語を振り返り、より理解や知識を深めることができるのではないかと思うのです。

そんなわけで、これからもこのように英語とドイツ語の単語を比べる企画を続けていきたいと思います。

宍戸 里佳(著)、ベレ出版

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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