英語"deer"は本来「動物」を意味していた?語源を元に解説します!

2021/05/12

英語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

英語とドイツ語は、ゲルマン語派という同じ言語グループに属し共通のルーツを持ちます。

そのため、似たような語彙がいくつも見つかります。

ただルーツが同じで似た形をしているといっても、その意味が英語とドイツ語では異なっている単語も存在します。

当記事ではそんな単語に焦点を当てて、英語とドイツ語の差異を見ていこうと思います。


英語"deer"とドイツ語"Tier"

今回取り上げるのは、英語"deer"[ディア]とドイツ語"Tier"[ティア]という名詞です。

それぞれ「鹿」、「動物」という意味で用いられます。

両者は音がよく似ていますね。両言語の共通の先祖であるゲルマン祖語"*deuzą"から発展した、同じ語源の名詞です。

ただ、英語"deer"が「鹿」と限定的であるのに対し、ドイツ語"Tier"は「動物」と、意味する対象範囲が広いことが分かります。

同じルーツを持ちながら、英語では何故「鹿」に限定されているのでしょうか?


語源でたどる英語"deer"の変化

Online Etymology Dictionary”を用いて、語源を調べてみましょう。

Old English deor "wild animal, beast, any wild quadruped," in early Middle English also used of ants and fish, from Proto-Germanic *deuzam, the general Germanic word for "animal" (as opposed to man), but often restricted to "wild animal" (source also of Old Frisian diar, Dutch dier, Old Norse dyr, Old High German tior, German Tier "animal," Gothic dius "wild animal," also see reindeer).

遡ること今から1,000年以上前の古英語の時代には"deer"の古い形、"deor"は「野生動物」という意味を持っていました。

更には蟻や魚といった生き物も意味に含んでいたそうです。

The sense specialization to a specific animal began in Old English (the usual Old English word for what we now call a deer was heorot; see hart), was common by 15c., and is now complete. It happened probably via hunting, deer being the favorite animal of the chase (compare Sanskrit mrga- "wild animal," used especially for "deer").

しかしながら、特定の動物に限定する用法は既に存在していたようです。

それまでは通常、"heorot"という単語が「鹿」を表していました。しかし15世紀までに"deer"を「鹿」とする用法が一般的となり、現在に至ったとのことです。

「鹿」が特に意味されることとなった理由としては、恐らく狩猟において「鹿」が獲物の追跡に人気の動物であったためだとされています。

ちなみに、現代ドイツ語では"Hirsch" [ヒルシュ]が「鹿」を表します。の語源を遡ると、古英語"heorot"と共通のルーツにつながることが分かりました

ドイツ語では「動物」と「鹿」を意味するそれぞれの単語が保たれているのに対し、英語では"heorot"という形が廃れ、"deer"が「鹿」を意味することになったという変遷が見えてきました。


英語で「動物」を表す単語

現代英語では"animal"が「動物」を表しますが、この単語はラテン語に由来します。

ゲルマン語派にルーツを持つ古英語"deor"が、ラテン語にルーツを持つ"animal"に取って代わられたということになります。

この点について、イギリス(イングランド)の歴史を紐解くとノルマンコンクエストという歴史的な出来事の影響が考えられます。

北フランスのノルマンディー地方やってきたノルマン人によりイングランドが征服された出来事で、これを期に古英語が使われていたイングランドにラテン語にルーツを持つフランス語が流入しています。

今の英語は、語彙の約7割が実はラテン語(フランス語)にルーツがあるとも言われています。

英語において、"deer"が「動物」から「鹿」という意味に限定されたのは、狩猟用に好まれたという理由だけではなく、そうした歴史的背景によるところもあるかもしれません。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は、英語とドイツ語を比較し、同じルーツを持ちながら現代では意味が異なる単語に注目しました。

英語とドイツ語は同じルーツを持つとはいえ、日常的に用いられる英単語を見るとあまりドイツ語との関連性が見えてこないのは、歴史的な背景が多いに関係しているということも分かりました。

そうした背景があるからこそ、実は英語がラテン語に由来する言語(フランス語など)を学ぶ上で何となく意味を類推しやすくなっていたり、ドイツ語と比較する際に新たな発見があったりするのだと思います。

宍戸 里佳(著)、ベレ出版

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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