"Dinner" =「夕食」ではない? いつとる食事のこと?

2023/12/21

英語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

先日ノルウェー語を学んでいると、新出単語の1つに"middag"がありました。

ゲルマン系の言語を学んだことがある方なら類推可能と思いますが、"middag"は"mid-"「真ん中」と"dag"「日」から成り立っており、英語"midday"やドイツ語"Mittag"に相当します(意味は「昼、正午」)。

ところがノルウェー語では、主に「ディナー」の意味で用いられるとのこと!

調べてみると、他にもデンマーク語やスウェーデン語でも同様の用法があります。

お昼なのに「ディナー」とはこれ如何にというわけで、今回は「ディナー」という表現について調べてみました。


「ディナー」とは、いつとる食事のことか?

私の家からほど近いところにある洋食屋さんの営業時間は、1115時の「ランチ営業」と1723時の「ディナー営業」のように二部に分かれています。

また飲食店予約サイトでディナー予約を検索してみると、早くても17時からの受付がほとんどです。

このように日本では一般的に「ディナー」といえば晩の食事を指すのだと言えます。

ところが、「ディナー」の元になった英語"dinner"の定義は必ずしも晩の食事というわけではありません。


英語"dinner"の意味、語源とは?

辞書によると"dinner"の意味は以下のように記載されています。

正餐、(特に)夕食(1日のうちで主要な食事;昼食が dinner の場合、夕食は supper または tea、夕食が dinner の場合、昼食は lunch

(参照:プログレッシブ英和中辞典(5)

本来"dinner" =「夕食」には限らないというわけです。引用中にある通り、お昼が主要な食事であれば、それが"dinner"と言えるわけです。

また語源を尋ねてみると、興味深い発見があります。

c.1300, "first big meal of the day" (eaten between 9 a.m. and noon), from Old French disner "breakfast" (11c.), noun use of infinitive disner (Modern French dîner) "take the first meal of the day,"

対訳:1300年頃「その日の最初の主要な食事(午前9時から正午の間にとられた)」、古フランス語の動詞不定形disner(現代フランス語dîner)「その日最初の食事をとる」の名詞的用法disner「朝食」(11世紀)から

(出典:Online etymology dictionary

直接の由来となった古フランス語では「朝食」という意味の単語だったのです。

さらにルーツを遡ってみましょう。

from Gallo-Roman *desiunare "to break one's fast," from Vulgar Latin *disieiunare, from dis- "undo, do the opposite of" + Late Latin ieiunare, jejunare  "to fast,"

対訳:ガロ・ロマンス語*desiunare「断食を解く」←俗ラテン語*disieiunaredis-「非、反」+後期ラテン語ieiunarejejunare「断食する」)から。

(出典:Online etymology dictionary

現代語"dinner"は俗ラテン語の*disieiunareにまで遡ると考えられ、こうして見るとだいぶシンプルなつづりとなりました。

ところで、ラテン語の*disieiunare「断食を解く」は、英語"break"「解く」+"fast"「断食」="breakfast"「朝食」と全く同じ成り立ちなのだと分かります。

※英語"fast"は名詞で「断食」という意味があります。

英語においては既に"breakfast"「朝食」という語が存在していたことから、"dinner"はその座を譲り、「1日の内の主要な食事」に落ち着いたのかもしれませんね。


変化する"dinner"「主要な食事」の時間?

以上のことから、「ディナー」だとどうしても日本では晩の食事がイメージされてしまうので"dinner"の日本語訳は「正餐、主要な食事」だと覚えておく方が、英語圏では混乱が無さそうです。

ただ英語圏でも"dinner"の時間は徐々に遅い時間にシフトしているようです。

Always used in English for the main meal of the day, but the time of that has gradually grown later. The change from midday to evening began with the fashionable classes.

対訳:通常、英語ではその日の主要な食事という意味で用いられるが、その食事の時間は徐々に遅い時間に移りました。お昼から夕方への変化は、上流の社交界から始まった。

(出典:Online etymology dictionary

また、記事冒頭で例に挙げたノルウェー語"middag"については以下のような情報がありました。

Middagen var tradisjonelt det eneste varme måltidet på hverdager i Norge og ble inntatt midt på arbeidsdagen (cirka kl.12), men det har etter hvert blitt mer vanlig å spise middag i tidsrommet 14-20 på ettermiddagen

対訳:ノルウェーでは伝統的に平日の温かな食事はmiddagだけであり、勤務時間の中頃(12時頃)に食べられていましたが、徐々に午後2時から8時の間にmiddagをとることが一般的になっています。

(出典:no.wikipedia.org/wiki/Middag

他の言語で「お昼」を意味する"middag"がノルウェー語で「主要な食事」として用いられるのは、ノルウェーの伝統的な食習慣が由来していたようです。

その時間も徐々に午後に後ろ倒しされているそうですが、昔に比べて照明器具が発達したことや、日中の仕事などの都合を背景に「主要な食事」の時間は全体的に遅くなっているのだと思われます。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は「ディナー」について考えてみました。

英語"dinner"という簡単な単語でも改めて意味や語源を調べてみると、興味深い発見がありますね。

今後もこうした発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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