ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字という三種類の文字を使い分けるという、世界的に見ても非常に珍しい言語です。
特にカタカナは外来語の表記で活躍(?)します。
とはいえ、外国語の音を正確にカタカナ表記することはできません。
例えば英語"bat" "but"はカタカナでどちらも「バット」と表現するしかありませんが、英語では異なる音です。
今回は外国語をカタカナ表記することが難しい例を、紹介したいと思います。
1.ブルボンとバーボン
日本では製菓会社の名前でも知られている「ブルボン」は、もともとフランス語"Bourbon"でありフランスを支配した王朝名です。
その名前のルーツはOnline
Etymology Dictionaryによると以下の通り解説されています。
probably from Borvo, name of a local Celtic deity associated with thermal springs, whose name probably is related to Celtic borvo "foam, froth."
対訳:恐らくBorvo(この地域のケルト系住民にとって温泉の神様の名前)から、ケルト系の言語brvo「泡」と関係があると思われる。
(出典:Online
Etymology Dictionary)
ケルト系の神様の名から後にフランスの地名"Bourbon
l'Archambault"が生まれ、そこから生まれた家系が築いたのがブルボン朝のルーツというわけです。
実は、この"Bourbon"は後に英語に取り込まれ現在「バーボン」として知られるお酒の名前でもあります。
「バーボン」は米国ケンタッキー州バーボン郡で初めて製造されたことにちなむようですが、その由来はやはりフランス語からきています。
The name reflects the fondness felt in the United States for the French royal family, and especially Louis XVI, in gratitude for the indispensable support he had given to the rebel colonists.
対訳:この名前は米国に於いて、反乱軍の入植者らに対するフランス王室(特にルイ16世)の不可欠な支援への感謝の念が現れている。
(出典:Online
Etymology Dictionary)
ルイ16世とはブルボン朝第5代の王であり、この支援が後のアメリカ合衆国独立につながることになります。
こうしてケルト系の言葉にルーツを持つ"Bourbon"は後に英語にも取り込まれたわけですが、それぞれの言語の発音に近い表記で「ブルボン」と「バーボン」の2通りができあがったというわけですね。
2.ホイールとウィール
自転車や自動車を構成する重要部品の1つホイールは日本語で「車輪」と訳せますが、英語では"wheel"とつづります。
英語で"wh-"から始まる語は多数ありますが、そのカタカナ表記は"white"「ホワイト」、"whale"「ホエール」といったように子音"h"を「ホ」と表現する傾向にあります。
一方で、小麦を意味する"wheat"は「ウィート」という表記の方が一般的で「ホイート」という表記はあまり見かけません。
このあたりはどちらの表記が分かりやすいか、伝わりやすいかが反映された結果かもしれませんね。
そんな中、"wheel"は「ホイール」だけでなく「ウィール」という表記も使われています。
どちらも意味は「車輪」ですが、何が異なるのでしょうか?
実は、スケートボードの車輪のことを特に「ウィール」と呼ぶのだそうです。
英語ではどちらも"wheel"ですが、このような使い分けは日本語ならではかもしれませんね。
3.ウィップとホイップ
"wheel"と似たもう一つの例として、"whip"があります。
これも"wh-"の部分をどう読むかによって「ウィップ」か「ホイップ」に分けられます。
まず"whip"という語を辞書で引いてみると、以下のように意味が記載されていました。
むち打つ、(むち打つように)たたく、(卵・クリームなどを)かき回して泡立たせる
(参照:プログレッシブ英和中辞典(第5版))
カタカナでは「ウィップ」の方が「むち」を、「ホイップ」の方が「泡立て器」を連想させますが、これも日本語ならではの使い分けと言えそうです。
"whip"の語源はと言うと、「泡立たせる」という意味の方が後から派生したことが伺えます。
mid-13c., wippen "flap violently," not in Old English, of uncertain origin, ultimately from Proto-Germanic *wipjan "to move back and forth" (中略) The cookery sense is from 1670s.
対訳:13世紀半ば、wippen「激しくたたく」、古英語には見られず起源は不詳だがルーツはゲルマン祖語*wipjan「前後に動かす」(中略)料理に関する用法は1670年代から。
(出典:Online
Etymology Dictionary)
「むち」とは形が異なりますが、激しくたたくという点で「泡立て器」も共通するところがありますね。
4.ヘボンとヘップバーン
我々は外国語をカタカナで置き換えることをしますが、反対に日本語をアルファベットで表記することもあります。
その際に一般的な表記方法がヘボン式ローマ字です。
幕末に来日したジェームス・カーティス・ヘボンという人物が日本語のアルファベット表記法を考案したことにちなみ、ヘボン式という名がついたわけです。
時代と場所が変わって20世紀に活躍した英国の女優の1人に、オードリー・ヘップバーンがいます。
米国のヘボンと英国のヘップバーンは一見すると何の関係性も無さそうですが、実はアルファベット表記だとどちらも"Hepburn"となります。
英語版Wikipediaにおける名字"Hepburn"の解説を見ると、この発音は /ˈhɛpˌbɜːrn/だとあります。
これを正確にカタカナで表現することは難しいでしょう。
ただ、ナチュラルな発音では母音を伴わない子音pの聞こえが小さく後続の"burn"の方がより聞こえやすくなると思います。
そうしたことから、「ヘボン」は聞こえ方に沿ったカタカナ表記であり、「ヘップバーン」は"Hepburn"というつづりに沿ったカタカナ表記だと言えます。
ちなみにWikipediaによれば、この苗字はスコットランドからイングランド北部にルーツがあるようで、語源的には古英語の "heah"「高い」と "byrgen"「墳丘」から成り立っていると考えられるそうです。
(参照:en.wikipedia.org/wiki/Hepburn_(surname))
日本語に置き換えるならば、さしづめ「高丘」さんとでも呼べるかもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、外国語のカタカナ表記について調べてみました。
発音体系や持っている音の種類が異なる言語間で、正確な置き換えは不可能です。
そのために発生する原語とのずれは外国語学習においては正確な聞き取りやつづりの妨げになるかもしれず、注意しなければいけませんね。