【実例アリ】英語commuteの「通勤する」以外の意味とは?

2022/10/13

英語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

働き方改革が言われるようになって久しいですが、その一環でテレワークの導入により日々の通勤が減ったという方もいるかもしれません。

「通勤」は英語で"commute"と表現しますが、この"commute"は実は元々「通勤」とは全く関係のない意味の単語でした。

元の意味は何だったのでしょうか?今回は"commute"という単語について調べてみました。


英語"commute"の語源とは?

元の意味を知るために、語源をさかのぼって調べてみましょう。

Online etymology dictionaryによると以下の解説が得られます。

mid-15c., "to change (something into something else), transform," from Latin commutare "to often change, to change altogether,"

対訳:15世紀半ば、「(あるものを別のものに)変える、変化する」、ラテン語commutare「頻繁に変化する、完全に変化する」から。

(出典:Online etymology dictionary

何と本来は"to change"「変化する」という意味であったことが分かります。

またルーツとなった、ラテン語の"commutare"は接頭辞"com-"と"mutare"の複合形と推察されます。

この語形成についても確認してみましょう。

from com-, here perhaps an intensive prefix (see com-), + mutare "to change" (from PIE root *mei- (1) "to change, go, move").

対訳:com-(ここでは恐らく強調の接頭辞として。com-を参照)とmutare「変化する」(印欧祖語の語根*mei-(1)「変化する、行く」)から。

(出典:Online etymology dictionary

"mutare"のみでも「変化する」という意味があり、接頭辞"com-"によってその意味が強調されているということでした。


なぜ"commute"が「通勤する」という意味になった?

では「変化する」という意味の"commute"がなぜ「通勤する」という意味になったのでしょうか?

さらにOnline etymology dictionaryを読み解いてみたいと思います。

Meaning "go back and forth to work" is attested by 1889, from commutation ticket "a season pass" on a railroad, streetcar line, etc.

対訳:「仕事に行き来する」という意味は1889年までに見られ、commutation ticket「(鉄道や路面電車などの)定期券」の名前からきています

(出典:Online etymology dictionary

定期券の存在が1889年までにはあったというのは驚きです。1889年というと日本の元号では明治22年だそうで遠い昔のように感じます。

ただ調べてみると同年には東海道本線の国府津~静岡間など鉄道路線がいくつか開通しており、日本の近代化もだいぶ進んでいたようです。

先進的な欧米においては既に現代のように人々は電車に乗って通勤していたということですね。

とはいえ、定期券を指す語になぜ"commute"が用いられたのでしょうか?

from commute in its sense of "to change one kind of payment into another" (1795), especially "to combine a number of payments into a single one, pay a single sum instead of a number of successive payments" (1845).

対訳:commuteの元の意味「支払いの種類を別のものに変える(1795年)」、特に「複数の支払いをひとまとめにする、複数の連続払いを1回で支払う(1845年)」から。

(出典:Online etymology dictionary

"commute"の元の意味「変化する」が、18世紀以降「支払いの方法を変える」という意味に発展したことがポイントです。

日々の切符代支払いを一括しての支払いに変えて定期券を得るという観点から、"commute"の用法がぴったりだと言えます。

とりわけ「通勤する」という用法に落ち着いたのは、当時"commutation ticket"「定期券」を必要としたのが働く人だったということからでしょう。


現代でも"commute"の意味は「通勤する」だけではない!?

以上の背景から、専ら「通勤する」という意味で用いている"commute"ですが、現代でも元の意味「変化する」が無くなった訳ではありません。

辞書を紐解くと、"commute"の様々な意味が見つかります。

[]()

1〈刑罰・責務などを〉(軽いものに)代える

2〈物を〉変える、変化させる;〈支払い方法などを〉振り替える

 ()

 通勤 [通学する;(ひんぱんに)往復する

 代わりとなる、代替物となる

3(支払いをまとめて)1回払いにする、1度に払う

(参照:「プログレッシブ英和中辞典(4)」)

「通勤する」という意味は自動詞の用法の1つに過ぎず、他の意味は元の意味が活きた用法であることが分かります。

実際にニューヨークタイムズ電子版で、次のような記事が見つかりました。

Governor Commutes Sentence in Texas

Kenneth Foster, whose death sentence has raised international protest, won a rare commutation to life in prison.

(参照:archive.nytimes.com

1行目(記事のタイトル)に"Commutes"とありますね。

この"commute"は「通勤する」という意味ではありません。続く"Sentence"を目的語とする他動詞だからです。

また"Sentence"はここでは「文章」では無く、「判決、刑」という意味で用いられています。

つまりこの記事の日本語訳は「テキサス州知事が減刑を言い渡す」となります。

2行目以降にも"commutation"という名詞形がありますが、これももちろん「通勤」ではありません。

日本語訳としては以下のようになります。

「死刑判決が国際的な抗議に発展したケネス・フォスターは、滅多にない終身刑への減刑を勝ち取った」


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は英語"commute"について調べてみました。

「通勤する」という意味のイメージが強い単語ですが、元の意味から派生した用法の一部に過ぎず、また「減刑する」「支払方法を変える」という意味もあるので要注意ですね。

実際に「減刑」での使用例も見つかりました。

誤訳の元とならないようにしっかりと意味を覚えておきたいですね。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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