外国語で「ドイツ」の呼び名、いくつ知っていますか?

2022/04/25

ドイツ語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

「日本」という国名は、海外では英語"Japan" [ジャパン]やチェコ語"Japonsko" [ヤポンスコ]のように別の呼称で呼ばれることが一般的です。

この違いは内名(ないめい:ネイティブの呼称「日本」)と外名(がいめい:国外の呼称"Japan"等)と言うそうですが、内名に対して外名がある国は日本に限りません。

今回は「ドイツ」の内名と外名について、紹介したいと思います。


ドイツの内名"Deutschland"

まずドイツ語ネイティブの呼称である内名は"Deutschland" [ドイチュラント]と言います。

母音"eu"は「オイ」のような音を表し、文字と音(読み)が基本同じドイツ語において異なる例ですが、国名で用いられている点にドイツらしさ(?)を個人的に感じます。

また末尾"d"は「ド」と濁らないのがドイツ語読みのルールです。

"Deutschland"の語源とは?

この内名の語源は何でしょうか。

英語版Wiktionaryによると以下の解説が得られます。

From Middle High German Diutschlant, compound word formed from phrasings like diutsch lant…

対訳:中高ドイツ語Diutschlantから、diutsch lantというフレーズに由来する複合語…

(出典:en.wiktionary

"Deutsch"(かつて"Diutsch")と"land"(かつて"lant")の複合語であることが分かります。

後半の"land"は「州」という訳を上で挙げましたが「国」という意味もあり、今回はそちらの方が良いでしょう。

では前半部分"Deutsch"の語源は何でしょうか。

From Middle High German diutisch, diutsch, diutsc, tiutsch, tiusch, from Old High German diutisk, diutisc (“popular, vernacular”), from Proto-West Germanic *þiudisk, from Proto-Germanic *þiudiskaz (“of the people, popular”), an adjective from Proto-Germanic *þeudō (“people”)

対訳:中高ドイツ語diutischdiutschdiutsctiutschtiuschから、古高ドイツ語diutiskdiutisc「民衆の、土着の」、西ゲルマン祖語*þiudisk、ゲルマン祖語*þiudiskaz「人々の、民衆の」に由来、ゲルマン祖語*þeudō「人々」の形容詞形。

(出典:en.wiktionary

その語源を紐解いてみれば、意味はシンプルにも「人々」がルーツであるとのことです。

つまり、"Deutschland"は「人々の国」ということになります。


外名1."Allemagne"(フランス語)

ここからはドイツの外名(国外からの呼称)を紹介します。

まずフランス語での呼称は、"Allemagne" [アルマーニュ]です。

ドイツの内名とは全く形が異なりますが、この語源は何でしょうか。

From Latin Alemannia. Compare Portuguese Alemanha, Spanish Alemania.

対訳:ラテン語Alemanniaより。ポルトガル語Alemanha、スペイン語Alemaniaと比較せよ。

(出典:Online etymology dictionary

その呼称はラテン語に由来し、またフランス語の他にポルトガルやスペイン語でも似たように呼ばれるようです。

では、ラテン語"Alemmania"の語源は何でしょうか。

From Alemānnī (“a confederation of German tribes”).

対訳:Alemanni(ゲルマン民族における部族連合の1つ)から。

(出典:en.wiktionary

そのルーツは、"Alemanni"「アレマン人」という部族名に由来するとのこと。

ドイツ=ゲルマン民族の国と一般的にはイメージしてしまいますが、ゲルマン民族というのは様々な諸部族をまとめて呼んだものです。

この内、"Alemmani"は現代のドイツ南西部、ライン川上流地域を原住地としたそうで、地理的な近さから現代の隣国フランスやスペイン方面でドイツを指す外名になったと思われます。


外名2."Saksa"(フィンランド語)

フランス語などの例と同じく、部族名が由来となっている外名がフィンランド語の"Saksa" [サクサ]です。

これは音から想像がつくかもしれません。英"Saxon"「サクソン」やドイツ語"Sachsen"「ザクセン」に由来します。

"Saksa"の語源からも、この部族はドイツ北部に定住しており、その関係からフィンランド語におけるドイツの外名になったことが伺えます。

from Old Saxon Sahso (“a Saxon, a Low German”), a tribe/people inhabiting northern Germany (中略). Germans in general were identified with (Old) Saxons because contact with the German-speaking countries happened at first mainly via the Baltic Sea with people speaking Low German.

対訳:古ザクセン語Sahso「サクソン人、低地ゲルマン人」、北ドイツに定住していた部族/人々に由来(中略)。一般的にゲルマン民族は(古)ザクセン人と同一視されていました、というのも最初の主要な接触がバルト海を経由した低地ドイツ語を話す人々だった為です。

(出典:Online etymology dictionary

ちなみに、このサクソン(ザクセン)人は一部が"Angle"「アングル人」等とともに現代のイングランドに移住しており、それが"England"の由来およびアングロ・サクソン人の先祖とされています。

英語とドイツ語が同じゲルマン系の言語であり基礎的な語彙や文法面で類似しているのはこうした歴史的背景によるものだということですね。


外名3."Germany"(英語)

最も有名な(?)ドイツの外名と言えば、英語"Germany" [ジャーマニー]ではないでしょうか。

英語の他、イタリア語"Germania" [ジェルマーニア]やロシア語"Germaniya" [ゲルマーニヤ](※ラテン文字表記)でも用いられています。

この語源はラテン語に求められるものの、その意味は正確には分かっていないようです。

from Latin Germānia (“land of the Germans”), from Germānī, a people living around and east of the Rhine first attested in the 1st century B.C.E. works of Julius Caesar and of uncertain etymology.

対訳:ラテン語Germānia「ゲルマン民族の土地」から、ライン川周辺および東部に定住していたGermānīに由来、初出は紀元前1世紀のユリウス・カエサルの作品で、語源不詳。

(出典:Online etymology dictionary

一説によれば、「近親者」という原義が疑われているようです。

The exonym was said by Strabo to derive from germānus (“close kin; genuine”), making it cognate with germane and german,(以下略)

対訳:ストラボン(※訳者注:古代ローマ時代の地理学者)によると、この外名はgermānus「近親者、実の」に由来し、germanegermanとの関連があるとのこと(以下略)

(出典:Online etymology dictionary

引用中の"germane"は形容詞で「~と直接の関係がある」という意味の単語です。

同源の単語にはフランス語"germain" [ジェルマン]やスペイン"hermano" [エルマーノ]があります。

フランス語"germain"は「実の、父母を同じくする」という意味であり、スペイン語"hermano"は発展して「(実の)兄弟」という意味を持っています。

ゲルマン民族は歴史の中でローマ領内に侵攻しており、ラテン語圏のローマとは深い関係があったことは確かです。そこから命名されたのが"Germany"の語源と言えそうですね。


外名4."Německo"(チェコ語)

最後に紹介する外名は、スラヴ語圏からです。

チェコ語でドイツのことは"Německo" [ニェメツコ]と言います。

これまでのどの外名とも似ていませんが、これもやはり民族や部族名に由来するのでしょうか。

この単語は"Němec"「男性のドイツ人」に国や地域を表す接尾辞"-cko"がついた形です。

では、"Němec"の語源は何でしょうか。

Wiktionaryでは以下の解説が見つかりました。

From Proto-Slavic *němьcь (“foreigner, German”), from *němъ (“mute”) (Czech němý).

対訳:スラヴ祖語*němьcь「外国人、ドイツ人」から、*němъ「無言の、口がきけない」に由来(チェコ語němý)。

(出典:Online etymology dictionary

スラヴ語群に属するチェコ語から見れば、ゲルマン語派のドイツ語は言語の通じない「外国人」であるということでしょうか。

これもやはり地理的な面から、スラヴの言語が最も接触した外国語がドイツ語であった為に呼ばれるようになったのかもしれません。

ちなみに同じスラヴ語群のポーランド語でも、ドイツのことを同源の"Niemcy" [ニェムツィ]と呼びます。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回はドイツの内名と外名を取り上げました。

現代のドイツは9つの国と国境を接しているそうですが、そうした様々な関係性が豊富な外名の形にも影響しているのではないでしょうか。

別の言語では何と呼ばれるかを考えてみると、歴史的背景などその国をより知るための情報が得られるかもしれませんね。

Translate

このブログを検索

プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

お問合せフォーム

名前

メール *

メッセージ *

QooQ