英語"gang"が「集団、一味」を意味する理由とは?

2022/03/17

英語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

英語とドイツ語は、ゲルマン語派という同じ言語グループと見なされ基礎的な語彙や文法の面でよく似ています。

ただ似ているとはいえ、異なる地域でそれぞれ発展していく中で当然異なる点も出てくるものだと思います。

今回は、英語とドイツ語でつづりが同じ名詞"Gang"という単語について比べてみたいと思います。


英語・ドイツ語"Gang"を比較

まずは両者を比べてみましょう。

英語とドイツ語ともに"Gang"で、つづりは同じです。

発音は、英語/ɡæŋ/に対してドイツ語/ɡaŋ(k)/と微妙に異なります。

ルーツはどちらも共通しています。

from Proto-Germanic *gangaz (source also of Old Saxon, Old Frisian, Danish, Dutch, Old High German, German gang, Old Norse gangr, Gothic gagg "act of going"), of uncertain origin

対訳:ゲルマン祖語*gangazから(古ザクセン語、古フリジア語、デンマーク語、オランダ語、古高ドイツ語、ドイツ語gang、古ノルド語gangr、ゴート語gagg「行くこと」と同源)

(出典:Online etymology dictionary

意味は、英語では「集団、(悪者など)一味、ギャング」に対してドイツ語は「歩み、進行、通路」と異なります。

上の引用で見たように、同源の他の言語群が「行くこと」という意味であることを考えると英語の用法だけ少し異なるようです。


英語"Gang"の意味の変化

なぜ現代英語では、いわゆるギャングの意味が中心となったのでしょう。

Online etymology dictionaryに記載の説を紹介します。

The sense evolution is probably via meaning "a set of articles that usually are taken together in going" (mid-14c.), especially a set of tools used on the same job. By 1620s this had been extended in nautical speech to mean "a company of workmen," and by 1630s the word was being used, with disapproving overtones, for "any band of persons traveling together," then "a criminal gang or company" (gang of thieves, gang of roughs, etc.).

対訳:意味の変化は恐らく、「一緒に進行する一連の行為(14世紀半ば)」とりわけ「同じ仕事で用いられる一連のツール」によるものです。1620年代までに航海用語で「労働者の集団」の意味が拡張し、1630年代までに否定的なニュアンスで「ともに旅行する人の集まり」、次に「犯罪者の集団」の意味で用いられるようになりました。

(出典:Online etymology dictionary

元は他の言語と同じ「行くこと」が原義であったことが伺えます。

英語においてはその動作をともに行う集団の方に意味がシフトし、さらにはネガティブな用法中心になったということですね。


17世紀の危機」が影響した?

英語"gang"はなぜこのような意味の変化を辿ったのでしょうか。

以下は個人的な推測ですが、当時の歴史的背景が影響しているように思われます。

否定的な意味が"gang"に用いられ始めた17世紀は、ヨーロッパ各地において種々の混乱・波乱が起こった時代なのだそうです。

(参照:ja.wikipedia.org/wiki/17世紀の危機)

英語の母国である当時のイングランド王国では、貧富の差の拡大や国家財政の急激な悪化から社会不安は高まっており、1640年代には清教徒革命という内乱が発生しています。

(参照:ja.wikipedia.org/wiki/清教徒革命)

そのような背景下で治安の悪化や民衆の中には徒党を組んで悪事を働くことがあったかもしれず、"gang"の意味に影響を与えたのではないでしょうか。

一方ドイツでも三十年戦争による国土の荒廃で、当時の状況は決して安定的ではなかったようです。

ただ英語は歴史的にフランスからの言語流入もあり、"gang"の原義「行くこと」は別由来の単語が担いやすく、意味の変化も起こりやすかったのではないでしょうか。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は英語とドイツ語で同じつづりを持つ名詞"Gang"について比べてみました。

ルーツは同じながら言葉が用いられる地域や辿った歴史が異なれば、用法も異なって発展していくということですね。

他に、名詞"Gift"が英語とドイツ語で同じつづりでありながら意味が全く異なるという例があります。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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