英語"Dear"の語源は「値段」にあり?

2022/02/14

英語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

この頃は仕事上で日本国外の相手と連絡を取り合うことが増えています。

やり取りは通常メールベースなのですが、英文メールの作成に関して慣れるまではネット上でいろいろと調べては対応していました。

今回は、英文ビジネスメールの書き出しで一般的な”dear”という単語を調べて分かったことについて紹介したいと思います。


英語"Dear"の意味とは?

私はメールの書き出しで基本的に"Dear ○○."としていますが、"dear"はメール(手紙でも)における丁寧なあいさつの表現です。

ビジネス、特にお客様に宛てたメールの書き出しとしては"dear"を使っておけば間違いないでしょう。

ちなみ、相手の名前に"Mr./Ms."など性別や(女性の場合)婚姻状況に応じて異なる敬称を添えるイメージがありましたが、同僚の外国人に聞いたところ"Dear ○○(フルネーム)."のみでも問題ないとのこと。

特に初めて連絡をとるときやメールのみの対応だと相手の性別が確実に判断できないこともあるので、敬称を付けなくてもよいというのは安心ですね。

では、"dear"の意味は何でしょうか。

Weblio英和辞書によると以下の解説が得られます。

1.親愛な、かわいい、いとしい

2.(手紙の書き出し、演説の呼びかけで)親愛なる

3.(値段が法外に)高い、高価な

(参照:https://ejje.weblio.jp/content/dear

メールでの使用例からイメージする意味は、1.または2.だと思います。

ところが、3つ目に「高価な」という意味があることも分かります。

「親愛な」と「高価な」という異なる2つの意味があるのは何故でしょうか。

語源を遡って調べてみましょう。


"Dear"の語源とは?

Online etymology dictionaryによると以下のように解説されています。

Old English deore (中略), "precious, valuable; costly, expensive; glorious, noble; loved, beloved, regarded with affection" from Proto-Germanic *deurja-

対訳:古英語deore(中略)、「貴重な、価値ある、高価な、栄誉ある、高貴な、愛されし、最愛の、愛情に関する」、ゲルマン祖語*deurja-から

(出典:Online etymology dictionary

古くは「高価な」という意味が中心であったことが伺えますが、一方で"(be)loved"や"affection"という単語からも分かるように「親愛な」という意味も含まれていたことが分かります。

また、このルーツとなったゲルマン祖語"*deurja-"は、他のゲルマン系の言語にも受け継がれています。

(source also of Old Saxon diuri "precious, dear, expensive," Old Norse dyrr, Old Frisian diore "expensive, costly," Middle Dutch diere "precious, expensive, scarce, important," Dutch duur, Old High German tiuri, German teuer) , a word of unknown etymology.

対訳:(古ザクセン語diuri「貴重な、親愛なる、高価な」、古ノルド語dyrr、古フリジア語diore「高価な」、中期オランダ語diere「貴重な、高価な、重要な」、現代オランダ語duur、古高ドイツ語tiuri、現代ドイツ語teuer)、語源不明の単語。

(出典:Online etymology dictionary

現代オランダ語"duur"や現代ドイツ語"teuer"をそれぞれ辞書で引くと、「高価な」という意味が見つかります。

※ドイツ語では「親愛な」という意味もありますが、"gehoben"「格式ばった」表現に聞こえるようです。

残念ながら語源は不明であるものの「高価な」と「親愛な」という両方の意味を持っていた単語が、英語では「親愛な」という方のみ残り現代に至っているようです。

As an affectionate address (my dear, father dear), mid-13c. As a polite introductory word to letters, it is attested from mid-15c.

対訳:愛情表現(my dearfather dear)としての用法は13世紀中ごろから。手紙の丁寧な書き出しとしての用法は15世紀中ごろから見られます。

(出典:Online etymology dictionary


「高価な」と「親愛な」の関係とは?

英語"dear"に関して調べてみましたが、「高価な」と「親愛な」という意味を合わせもつ単語はゲルマン系の言葉に限らないようです。

例えばラテン語"carus"という形容詞は、英語"dear"のように「高価な」と「親愛な」の両方の意味を持ちます。

ラテン語から派生した以下のロマンス諸語も、やはり両方の意味を持っていることが辞書から確認できます。

 フランス語  cher [シェール]

 イタリア語  caro [カーロ]

 スペイン語  caro [カーロ]

 ポルトガル語 caro [カーロ]

さらにはスラヴ系の言語も「高価な」と「親愛な」は一つの単語で表されるようです。

 ロシア語   dorogoj [ダラゴーイ]※ラテン文字表記

 チェコ語   drahy [ドラヒー]

 ポーランド語 drogi [ドロギ]

(いずれもスラヴ祖語*dȏrgъに由来)

ルーツとなった単語が各言語グループで異なるとはいえ、「高価な」と「親愛な」という意味を等しく考える感覚はヨーロッパ内で共通していたのかもしれませんね。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は英語"dear"について調べてみました。

今では愛情を表す"dear"に「高価な」という意味が本来あったとは驚きました。

また同様の表現がゲルマン系以外の言語でも見られるというのは面白いですね。

ゲルマン、ロマンス、スラヴと異なる言語グループも更に遡るとインド・ヨーロッパ語族という1つの祖先につながることも知られており、根本のところで彼らの感覚は共有されているのかもしれませんね。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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