「40」にして惑うロシア語!?

2022/02/17

スラヴ諸語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

外国語学習において、数字表現を覚えることもまた重要なのは言うまでも無いことだと思います。

現地での買い物や場所の確認(部屋番号や住所、駅の番線など)をするにあたり、数字は欠かせない情報です。

旅行など一時的な滞在であればガイドブックや会話集を都度見ながらでもいいかもしれませんが、せっかくならばある程度は覚えておきたいですよね。

今回はロシア語における「数字」に関するお話です。


【前提】ロシア語の表記について

そもそもロシア語においては表現を覚える前に、用いられる文字について知っておく必要があります。

英語やフランス語、ドイツ語などで用いられる"a, b, c…"と言ったラテン文字(いわゆるローマ字)とは異なり、ロシア語はキリル文字で表記されます。

キリル文字は、日本では顔文字で一部がよく知られています。

例えば、(゜д゜)で口の部分はキリル文字「デー」が使われています。これはラテン文字の"D"に相当します。

キリル文字には基本的に相当するラテン文字で書換えすることができます。当記事では、読みやすさの観点からラテン文字に置き換えてロシア語を紹介します。


ロシアの数字表現

それでは本題であるロシア語における数字表現を見てみましょう。

今回のお話は、10の倍数についてです。

まずは1030をロシア語で何と言うか以下に示します。

 10 desjat [デースヤチ]

 20 dvadcat [ドヴァーツァチ]

 30 tridcat [トリーツァチ]

※発音は目安です(以下同様)。

この20と30は、10をベースに構成されています。

すなわち、20が"dva"「2」と-dcatの合成、30が"tri"「3」と-dcatの合成です。

-dcatは、形の似ているdesjat「10」の変化した接尾辞形と言えます。

以上のことから、ロシア語の20は2×10、30は3×10のように構成されていると言えます。


ロシア語で「40」を何と言う?

ということは次の40も、4×10で表現できるということでしょうか?

ロシア語で「4」は"četyre" [チトィーリ]と言います。

4×10と考えればčetyredcatで「40」となりそうですが・・・。

もう予想はついていると思いますが、残念ながら40はčetyredcatではなく"sorok" [ソーラク]と表現します。

20や30のように語尾-dcatは見当たりません。何故40は一見特別な形なのでしょうか。


ロシア語"sorok"の語源とは?

英語版wiktionaryには語源について以下のように言及されています。

一部、キリル文字をラテン文字に置き換えて以下に引用します。

Inherited from Old East Slavic sorokŭ, “a bunch of 40 sable pelts; forty”, displaced četyredesęte, “forty”

対訳:古東部スラヴ語sorokŭ「クロテンの毛皮40枚の束、40」に由来、četyredesęte「40」から置き換わった

(参照:en.wiktionary

どうやら元は4×10の形"četyredesęte"で「40」だったのが、置き換えられたようです。

とはいえその意味「クロテンの毛皮40枚の束」とはどういうことでしょう?もう少し調べてみることにします。

疑問に対して様々な方が回答を提供してくれるQ&Aサイト、Quoraで以下の回答を得ることが出来ました。

Since 40 fur skins were required for one Russian shuba (fur coat), then the furs were traditionally packed by 40 per envelope for their trading purposes. Later, the name of envelope - sorok - turned into a measurement unit of furs (1 sorok = 40 fur skins), then broadened its meaning and became used for any pack of 40 articles, and finally replaced the initial name of numeral (40) in the Old Russian

対訳:ロシアのシュバ(毛皮のコート)1つ作るには毛皮40枚が必要だったため、取引の際には伝統的に毛皮は40枚ずつ詰められていました。その後、包装の名前sorokは毛皮の測定単位(1 sorok = 毛皮40枚)に転じ、意味の拡大により1まとまり40単位のものにも使われ、最終的には古ロシア語における40という数字を表す単語に置き換わりました。

(参照:quora.com/What-is-the-origin-of-the-word-for-forty-sorok-in-East-Slavic-languages

コートを作るための毛皮の単位に由来するとは、寒さの厳しいロシアならではかもしれませんね。

ちなみにロシア語と同じ東スラヴ語群に含まれ、地理的にも近いウクライナ語でも「40」を指す単語として使われているようですが、西スラヴ語群(ポーランド語やチェコ語等)では4×10に由来する形が使われています。


【参考】50以上の数字表現は?

40で特別な形が見られましたが、50より先はどうでしょうか。

 50 pjatʹdesjat [ピヤチデスヤート]

 60 šestʹdesjat [シスチデスヤート]

 70 sémʹdesjat [セーミデスヤト]

 80 vosemʹdesjat [ヴォーシミデスヤト]

20や30の語尾とは少し形は異なるものの、考え方はn×10(-desjat)の複合形だということが分かります。

ところが90になるとまた少し事情が変わってきます。

 90 devjanosto [ヂヴヤノースタ]

9をdevjatʹ[ヂェーヴヤチ]と言いますが、90は9×10の形にはなりません。

こちらについても今後調べた上で、ご紹介できればと思います。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回はロシア語の数字表現を取り上げてみました。

語源を遡ることで、その言葉が話されている地域の歴史も垣間見ることができました。

数字をそのまま暗記してしまってもいいですが、その語源を尋ねることでより記憶に残ると思うので調べてみて損は無いと思います。

ちなみに記事のタイトルは、数え年で40を指す不惑(ふわく)からです。40だけ他とは異なるロシア語の表現に、惑わないようにしたいですね。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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