ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
名詞を数で区別するというのは日本語ネイティブにとってイメージしにくい文法項目の1つだと思いますが、ヨーロッパの言語においては当然のように存在します。
一般的には単数形と複数形の区別があります。つまり対象が1つか、それ以上かで区別されます。
ただ世界は広いもので、双数という存在を持つ言語もあります。「双」という単語から明らかなとおり、対象が2つに対して与えられた区別です。
今回は、そんな名詞の数の区別に関して学んだフランス語の事例を紹介したいと思います。
フランス語の複数形の「形」について
単数形の名詞を複数形にするとき、英語では語尾に"-s"をつけるのが基本的なルールでした。
一部で例外はありますがそうした単語は外来語由来であり、複数形の形も借用元の形を取り入れたというパターンがほとんどです(例 "phenomenon"《単》→ "phenomena"《複》「現象」・・・これは元の言語であるギリシャ語の複数形変化パターン)
ところで、この"-s"をつけて複数形にするというのは英語に流入したフランス語の方法に由来します。
つまり、フランス語でも複数形は単数形に"-s"をつけるというのが基本的なパターンになります(もちろん例外はあります)。
例えば"père"《単》→ "pères"《複》「父親」と言った具合です。
フランス語の複数形の「音」について
ただ、注意しなければならないのがフランス語の「音」です。
フランス語では基本的に子音で終わる単語は、その子音が発音されません。
例えばフランスの首都は、つづりでは"Paris"ですが最後の"-s"は発音されず「パリ」と読まれます。
これは複数形につく語尾"-s"の場合も同様で、つづりの上では変化しても音は同じということになります。
先の例で言えば、"père"《単》→ "pères"《複》は単数でも複数でも音は[ペール]ということになります。
音だけでは基本的に対象の名詞が単数なのか複数なのか判断できないのということになるのですが、そこで冠詞が数の区別に役立ちます。
例えば"père"「父親」は単数形のとき定冠詞は"le" [ル]であり、複数形"pères"のときは"les" [レ]となります。
"le" [ル]か"les" [レ]の音の違いで単数か複数かが判断されるということですね。
複数形で「音」が変わる名詞がある
ところが、興味深いことに名詞の中には単数形から複数形になることで音が変わるパターンが存在します。
それが、"boeuf"「雄牛」や"oeuf"「卵」といった単語です。
これらの複数形は基本的なパターン、つまり"-s"を付けることででき上ります。
それぞれ"boeufs"《複》、"oeufs"《複》となります。
基本的なパターンであれば音は単数と複数で同じになるのですが、これらに関しては以下のような変化が起きます。
その1.最後の子音"-f"が脱落
"boeuf"《単》[ブフ]→ "boeufs"《複》[ブ]
"oeuf"《単》[ウフ]→ "oeufs"《複》[ウ]
単数では読まれていた末尾の子音"f" [フ]が複数形では脱落しています。
(そもそも最後の子音は発音されないことが基本ですが、"-f"に関しては例外だそうです)
その2.母音の音が変化
また、 [ブ / ウ]の部分も実は単数と複数では違う音に変わっています。
残念ながらカナ表記ではこの音の違いを表すことができません。そこで国際音声記号(IPA)を用いて音の違いを以下に示します。
/bœf/《単》[ブフ]→ /bø/《複》[ブ]
/œf/《単》[ウフ]→ /ø/《複》[ウ]
それぞれ単数では/œ/(※"oe"の合字)の音であったのが、複数で/ø/(※斜線つきの"o")になっています。
両者の音の違いは、口の開き方にあります。単数形の時の/œ/に比べ複数形の時の/ø/の方が少し口の開き方が小さくなるのです。
この違いばかりは文字での表現に限界がありますので、実際に聞いて確かめるのが一番です。
英語版wiktionaryでは、"boeuf(s)"と"oeuf(s)"のどちらもサンプル音声を聞くことができます。
なぜ母音の音が変化するのか?
とはいえ、何故に音が変化するのでしょうか。
これはフランス語の音節におけるルールが影響しているようです。
音節とは、単語を構成する音の最小単位です。
例えば"Paris" [パリ]という単語は [パ]と[リ]の2音節に分けられる、といった具合です(※本来は発音記号を元に考えます)。
この音節に関して、フランス語では①子音で終わる音節と②母音で終わる音節が存在します。
"boeuf(s)"の場合、単数形の音は/bœf/であり①に該当します。①は閉音節と言います
これが複数形になると音は/bø/であり②に該当します。②は開音節と言います。
ところで、2つの母音/œ/と/ø/の違いは何だったでしょうか。
先ほど、『/œ/に比べ複数形の時の/ø/の方が少し口の開き方が小さく』なると紹介しました。
以上のことから①閉音節の時は相対的に口の開きが大きい/œ/が、②開音節では口の開きが小さい/ø/になると言えそうです。
大きな声を出そうと思うと、「い」の音より「あ」の音の方が口の開きも大きくなり遠くまで届く声が出せると思いませんか?
フランス語において、①閉音節は最後が子音で終わるために②開音節と比べて母音の音をより響かせる必要があることからこのような変化が起こっているのかもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回はフランス語で学んだ単数形と複数形の間で起こる音の変化についてまとめました。
音の変化はどうやら音節の構成が変わることによって起きているようでした。日本語の母音は「あ、い、う、え、お」の5音ですが、フランス語は音のバリエーションが豊富で、また正しく区別しないと意味も変わりかねないということですね。
その違いは実際に触れてみなければ分からないものであり、やはり繰り返し聴いたり発音したりすることが大切だと思います。
聞き分けができるように、とことんフランス語を聞きこんでみたいと思います。