ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
当ブログではこれまで1つの記事で1つの言語に関するネタを紹介することがほとんどでしたが、今回は複数の言語にまたがって紹介したいと思います。
対象とするのはロマンス諸語という言語グループに分類される以下の言語です。
イタリア語
スペイン語
フランス語
ルーマニア語
ポルトガル語
同じ言語グループに含まれる言語はもちろんこれだけではありませんが、今回の記事ではこの5つの言語を対象としています。
ルーツを同じにするロマンス諸語
ロマンス諸語は、そのルーツを遡るとラテン語が共通の存在にあります。ラテン語は元々ローマ人の言葉であったのが、ローマ帝国の勢力拡大により各地で話されるようになりました。
ローマ帝国が崩壊後に各地域でそれぞれ発展した言語が、現代のイタリア語やフランス語などの言語になります。
そのためこれらの言語は、文法や語彙の面で相互に似ているという特徴があります。
ただ、そうはいっても異なる点は当然ながらあり、そこの違いを調べてみるのもロマンス諸語を学習する上で面白いところだと思います。
そこで、特に各言語でバリエーションが見られる「ありがとう」の表現について、以下から紹介していきたいと思います。
ロマンス諸語の「ありがとう」
感謝する表現「ありがとう」は、外国語を学ぶ際には特に覚えておきたい表現ですよね。
ロマンス諸語ではそれぞれ以下のように「ありがとう」を表現します。
イタリア語 Grazie [グラツィエ]
スペイン語 Gracias [グラシアス]
フランス語 Merci [メルシ]
ルーマニア語 Mulțumesc [ムルツメスク]
ポルトガル語 Obrigado
/-a [オブリガード /-ダ]
一見してイタリア語とスペイン語の表現は似ていますが、それ以外では特有の表現を用いているようです。
各言語の表現について、その意味やルーツを確認してみたいと思います。
イタリア語"Grazie" / スペイン語"Gracias"
両言語とも、ラテン語"gratia"「恵み、感謝する気持ち」に由来します。
ラテン語で「ありがとう」と表現する場合、"gratia"を複数形にして"Gratias
tibi ago."と言います。
少しだけ文法に触れますと"Gratias"が複数形の対格で「感謝を」、"tibi"が「君に」、"ago"が「(私は)~する」という意味です。
この複数形"gratias"の主格(主語になる形)は"gratiae"と言います。
イタリア語では、名詞を複数形にするときラテン語の主格の形をルーツとしました。つまり"Gratiae"に由来して、"Grazie"です。
一方スペイン語は、ラテン語の対格の形をルーツとしました。"Gratias"から"Gracias"です。
元になった単語は同じですが、複数形の作り方が異なって現代に至るということですね。
また、両言語とも単数形で「恵み、慈悲」などの意味を持つ点もラテン語由来です。
単数形はイタリア語で"grazia" [グラツィア]、スペイン語で"gracia" [グラシア]です。
フランス語"Merci"
フランス語の「ありがとう」は、ラテン語の"merces"「報い、報酬」に由来します。
英語"mercy"「恵み、慈悲」は、フランス語を経由してもたらされた同じルーツの単語です。
イタリア語やスペイン語とは元になった単語は異なるものの、相手への恵みをもたらす表現という点で同じと言えますね。
ところでラテン語"merces"は複数形になると"mercedes"と変化しますが、この単語は自動車ブランド「メルセデスベンツ」の"Mercedes"です。
メルセデスベンツは、ドイツのダイムラー社が製造・販売している自動車ブランドです。
このブランド名はその昔、オーストリアの自動車ディーラー・Emil
Jellinek [エミール・イェリネク]さんの娘の名前"Mercedes"から取られたそうです。
ちなみに日本では公式のHP表記も含めて一般には「メルセデス」と呼ばれますが、現代ドイツ語では「メルツェデス」のように発音します。
ルーマニア語"Mulțumesc"
ルーマニア語の「ありがとう」は動詞の不定形"a
mulțumi" [ア ムルツミ]が活用により変化した形です。
"Mulțumesc"は直接法現在形の1人称単数(つまり主語が「私」のとき)の活用形です。ということは、「私は感謝する」と言っていることになります。
この単語は英語版wiktionaryによると"la
mulți ani"であるとされ、文字通りには「何年にもわたって」という意味になるそうですが、「おめでとう」という意味で用いられていることが伺えます。
A common expression used on a variety of holidays and other occasions, corresponding, depending on the case, to happy New Year, happy birthday, congratulations, etc.
対訳:いろいろな休日やその他で使用される一般的な表現で、状況に応じて「明けましておめでとう」「誕生日おめでとう」などに対応します。
出典:en.wiktionary
お祝いや感謝の気持ちが、「何年にもわたって」長く続くということでしょうか。これまでの表現とはまた異なる「ありがとう」ですね。
ポルトガル語"Obrigado /-a"
ポルトガル語の「ありがとう」は、発話者が男性か女性かで語尾の形が少し異なります。
男性の場合は"Obrigado" [オブリガード]で、女性の場合は"Obrigada" [オブリガーダ]となります。
この単語はラテン語"obligatus"という形容詞に由来する単語です。英語"obliged"もこれに由来します。
元は"obli-"と子音"L"であったのがポルトガル語では"obri-"と子音"R"になっている点は注意しましょう。
ラテン語"obligatus"は「義務を負った」という意味で、動詞"obligo"「義務を課す」の過去分詞形という関係です。
ポルトガル語や英語も同様に、"obrigado /
obliged"が動詞不定形"obrigar / to oblige"の過去分詞形となります。
英語でも"be obliged"という表現で、「恩義を感じている」=「ありがとう」という表現があるようで、相手から受けた義務・義理に対する表現と言えるでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は「ありがとう」という表現について、ロマンス諸語での表現を比べてみました。
同じラテン語をルーツに持つとはいえ、各地域での発展に伴いその表現も様々ですね。
今後もこうした比較をしながら、楽しんで外国語学習に取り組んでいければと思います。