英語"friend"から、"R"を取ったらどうなるでしょう?

2021/09/08

英語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

昔、テレビで「Mother・・・Mを取ったらOther、他人です」というフレーズのCMが流れていました。

英会話学校か何かのCMだったかなと思って調べてみると、家庭教師のトライさんのCMでした。フレーズは当時から頭に残りやすかったために、今でも覚えています。

英単語はアルファベット26文字を組み合わせて作られます。つづりを間違えたらいけませんよ、正しいつづりをトライで学びましょうということを伝えたかったのでしょうね。

ところで、この一文字削ってみるという考えは私がそれまた昔の中学生の時に読んだ本「英会話・やっぱり・単語」において語彙を増やすアイデアの一つとして挙がっていました。

例えば、"alone"  "lone"  "one"といった具合です。

英単語を眺めていると、ついつい一文字取ったら別の意味になったりしないかな・・・等と考えてしまいます。

その一例として、今回はfriendからRを取ったらどうなるか?について書きたいと思います。


"friend"から"R"を取ったら・・・"fiend"?


英単語"friend"は、「友達」を意味する基本単語ですね。

この単語は、英語にとっての遠い先祖である"PIE"(印欧祖語)にルーツがあるようです。

1."friend"の語源

from PIE *priy-ont-, "loving," present-participle form of root *pri- "to love."

(出典:Online Etymology Dictionary

印欧祖語で「愛する」という意味の語根"*pri-"の現在分詞形"priyont"がルーツということから、「愛している人」というようなニュアンスでしょうか。

ちなみに、印欧祖語とは「印欧」という漢字からも分かるように現在のインドからヨーロッパに至る広範囲なエリアに存在する言語の共通のルーツ(祖語)と考えられている存在です。

例えばロシア語では「友達」のことを"прия́тель[プリヤーチリ](ラテン文字表記:"prijatel")と書きますが、この"pri-"も同じです。

英語の母国イングランドとロシア・・・土地の距離はとんでもなく離れていますが、こうした点に共通点が見出せたりします。

"friend"のルーツが分かったところで本題に戻ります。英語"friend"から"R"を取ったらどうなるでしょう?

"R"を取ったら、つづりは"fiend"ですね。実は、「フィーンド」のように発音する一般名詞です。

調べてみると、意味は「悪魔、悪魔のような人」を表す単語であることが分かります。


"fiend"のルーツ、"friend"との関係とは?

"friend"「友達」から"R"一文字欠けるだけで"fiend"「悪魔」となってしまうのは物騒ですね。この単語のルーツはどこにあるのでしょうか。

Online Etymology Dictionaryによると、以下の解説が得られます。

2."fiend"の語源

Old English feond "enemy, foe, adversary," originally present participle of feogan "to hate, " from Proto-Germanic *fijand- "hating, hostile"

こちらはゲルマン祖語"*fijand-"「憎んでいる」、および古英語の動詞"feogan"「憎む」の現在分詞形"feond"に由来するとのことから、「憎んでいる人」というようなニュアンスでしょうか。

また、古英語では「敵」という意味だったとも示されています。

"friend"と"fiend"、どちらも動詞の現在分詞形「~する、~している」に由来することから、その形が似ているのも納得ですね。

更に、両単語の関係はOnline Etymology Dictionaryにて以下のようにも述べられています。

As spelling suggests, the word originally was the opposite of friend (n.).・・・Boutkan says the "fiend" word was a Germanic analogical formation from the "friend" word.

訳:つづりが示唆するようにこの単語(注:fiend)はもともとfriendの反意語である。・・・Boutkan氏(注:オランダの言語学者)は、fiendfriendから成るゲルマン語派の類推的な形式だと言う。

さすがに「"friend"から"R"を取って"fiend"とした」というわけではありませんでしたが、友達の反対が敵であるとして、その関係性が伺えます。


英語で「敵」を表現する単語

さて、本来は「敵」を意味していた"fiend"は、現代英語では「悪魔」という意味に変ってしまいました。

Fiend at first described any hostile enemy (male and female, with abstract noun form feondscipe "fiendship"), but it began to be used in late Old English for "the Devil, Satan" (literally "adversary") as the "enemy of mankind," which shifted its sense to "diabolical person" (early 13c.). The old sense of the word devolved to foe, then to the imported word enemy.

(出典:Online Etymology Dictionary

本来の「敵」という意味は"foe"に、それから現代英語では"enemy"へと移りました。

この"foe"は、ゲルマン祖語"*faihaz"「憎む」に端を発しているようです。

3."foe"の語源

from adjective fah "at feud, hostile," also "guilty, criminal," from Proto-Germanic *faihaz (source also of Old High German fehan "to hate," Gothic faih "deception")

(出典:Online Etymology Dictionary

先ほどの"fiend"のルーツ(ゲルマン祖語"*fijand-")とは形が異なりますが、どちらも「憎む」という行為から生まれているようです。

では、現代英語で一般的に「敵」を意味する"enemy"はどうでしょうか。

実は、"enemy"はこれまでの"fiend"や"foe"と異なり、ゲルマン系の単語ではありません。

こちらはフランスを通じて英語に入った、ラテン語にルーツを持つ単語です。

また興味深いことに、"enemy"のルーツも「友達」との相反する関係を見ることができます。

4."enemy"の語源

from Latin inimicus "an enemy," literally "an unfriend," noun use of adjective meaning "hostile, unfriendly"・・・, from in- "not" (see in- (1)) + amicus "friend" related to amare "to love" (see Amy).

(出典:Online Etymology Dictionary

語源となったラテン語"inimicus"ですが、否定の接頭辞"in-"と"amicus"「友達」が結合した形だということが分かります。つまり「友達ではない」というのが原義です。

"fiend"と"enemy"は異なるルーツから生まれた「敵」という単語ですが、「友達」の反対という感覚は共通していたのかもしれません。


【参考】ロマンス諸語の「友達」と「敵」

ラテン語"amicus"「友達」と反対する"inimicus"「敵」が分かったので、参考までにロマンス諸語(ラテン語をルーツに各地域で発展した言語群)の「友達」と「敵」という単語も以下に並べてみました。

各言語とも左が「友達」、右が「敵」を意味する単語です。 

 イタリア語  amico [アミーコ] / nemico [ネミーコ]

 フランス語  ami [アミ] / enemi [エネミ]

 スペイン語  amigo [アミーゴ] / enemigo [エネミーゴ]

 ポルトガル語 amigo [アミーゴ] / inimigo [イニミーゴ]

 ルーマニア語 amic [アミク] / inamic [イナミク]

※"amic"よりも、一般的には"prieten"の方が他の言語の「友達」という意味に近いです。

いずれの言語もよく似ています。また、現代でも「友達」と「敵」の相反する関係がしっかり確認できますね。


最後に

いかがでしたでしょうか。英単語のつづりに着目したところから始まった話が、最後には他の言語にまで及んでしまいました。

とはいえ、それこそがヨーロッパの諸言語を学んでいて面白い点だと思います。言語グループや直接のルーツは異なれど、今回のような関係を発見できるので様々な言語を学ぶことはやめられません。

英単語のつづりも少し見方を変えてみると面白い発見がまだまだありそうですね。これからもこうした発見があれば取り上げたいと思います。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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