英文法の本質的な理解に役立つ本をご紹介します!

2021/09/28

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか。

今回は、最近読んだ本について紹介したいと思います。


話すための英文法ハック100KADOKAWA

外国語の習得において、文法項目の学習が重要である事は言うまでも無いと思います。

英語に関して言えば、名詞の単数形と複数形の区別、動詞の活用(いわゆる三単現のsや過去形、完了形といった時制)、直接法や仮定法といった法などが文法項目として挙げられるかと思います。

ただ、こうした文法に関して名称としては知っていても、実際の機能を説明するとなるとあやふやになることは無いでしょうか。

また暗記することで使えている表現も、その背景(なぜそのような文になるのか)を説明するとなると、おぼろげになってしまうことは無いでしょうか。

そうしたあやふや、おぼろげな状態で成り立っていた英文法に関して、本質を明らかにしてくれるのが「話すための英文法ハック100」です。

個人的にとてもおすすめだと思ったのですが、その理由を紹介していきたいと思います。


丸暗記に頼らず、英文法が理解できる

最近、ライフハック等「○○ハック」といった表現をネット上でよく見かけますが、本書でも冒頭で紹介されているように "高い技術力や豊富な知識で、そのものを分析して、それを改良したり、効果を検証したりする行為" をハックと言うそうです。

よく言われるハッキングやハッカーという単語は、コンピュータネットワークやシステムに対して悪意を持って分析・改変する行為または行為者を指す言葉といえますね。

本書は、「英文法ハック」というタイトルの通り、英文法を分析しその構造を分かりやすく読者に示してくれます。

本書にはふんだんに例文が取り上げられていますが、いずれも学校の英語で習ったことがあるような文章ばかりでした。その文章が、実はこういう背景で成り立っているのだということが分かるのが大きな特徴です。

結果として、学校の授業では丸暗記や「そういうものだから」という少々乱暴な理由付けで納得してしまっていた文法項目について、本質的に理解ができる構成になっています。


本質的に英文法が理解できるわけ

「本質的に理解ができる」とはどういうことか、もう少し掘り下げたいと思います。

本書を読んだ私は予備校での経験を思い出していました。

ずいぶん昔の話ですが、大学受験を控えていた私は予備校に通っていました。

各講師陣が内容をかみ砕いて、時に面白おかしく講義をしてくれることでスッと頭に入ってきていたのですが、特に印象的だったのが英文法の授業です。

例えば、「現在形」という表現は「不変形」と言い換えて考えようというもの。

「現在形」というのは英語"present tense"の直訳だと思いますが、日本語の「現在」という言葉をイメージしすぎると、以下の文章をなぜ現在形で表現するのか分からなくなってしまいます。

 例1)I jog in the park every morning.「私は毎朝、公園でジョギングをする」

例1は毎朝の習慣であり、今現在ジョギングしていることを意味していません。

そうした不変の習慣に関して「現在形」が用いられるから「不変形」と言い換えて考えようというのです。

 例2)I am from Japan.「私は日本の出身です」

例2は正に不変性を表した文と言えます。出身が日本であることは現在に限らず、それ以前も今後も変わることではありません。

英語の"present tense"の訳としては「不変形」は適さないかもしれませんが、本来の用法を考えれば納得しやすいアプローチ方法だと思います。

これは一例ですが、予備校の授業では既にある「現在形」等という名称の固定観念にとらわれず、その用法の本質を知って使いこなそうというアプローチが印象的でした。

そして、そうしたアプローチを中心に英文法の解説が100個載っているのが本書だといえます。

また、「話すため」ともありますが、実際には読む・書く・聴くにおいても使えるものばかりだと思います。


【参考】"hack"「ハック」の本来の意味や語源とは?

ところで動詞"hack"について、せっかくなのでその本来の意味や語源を調べてみました。

手元の辞書によると、1つ目の意味としては「たたき切る、切りつける」というのが挙がっていました。

またその語源はOnline Etymology Dictionaryによると以下のように解説されています。

from verb found in stem of Old English tohaccian "hack to pieces," from West Germanic *hakkon (source also of Old Frisian hackia "to chop or hack," Dutch hakken, Old High German hacchon, German hacken),

対訳:古英語tohaccian「切り分ける」の語幹部分から、西ゲルマン語*hakkon(古フリジア語hackia「たたき切る」、オランダ語hakken、古高ドイツ語hacchon、ドイツ語hackenと同源)

出典:Online etymology dictionary

同じ西ゲルマン語群に属する近隣言語にも同源の単語が見られることが分かります。またその昔、古英語の時代では"tohaccian"という形だったことが分かります。

「たたき切る、切り分ける」という原義が「(切り分けて)分析する」、ひいては悪意を以てコンピュータシステム等を分析・改変するという攻撃的な現代の用法に繋がっていったということでしょう。

では、現代英語では残らなかった"to-"の部分は何でしょうか。

Online etymology dictionaryには以下の解説があります。

particle expressing separation, putting asunder, from West Germanic *ti- (source also of Old Frisian ti-, Old High German zi-, German zer-),

対訳:分離を表す接頭辞、西ゲルマン語*ti-(古フリジア語ti-、古高ドイツ語zi-、ドイツ語zer-と同源)

出典:Online etymology dictionary

古英語"to-"は、現代英語の前置詞"to"ではなく接頭辞だということですね。またドイツ語における接頭辞の"zer-"と同源であることが分かりました。

ドイツ語では現代でもこうした接頭辞、いわゆる「前つづり」は現役で"zer-"は「分離」のイメージを持ちます。

調べてみると、現代ドイツ語には"hacken"「たたき切る」という形に加えて、"zerhacken"という形もありました。

意味は「細かく切る、切り刻む」であり、"hacken"に比べ「分離」のイメージがよりはっきりと表されていますね。

一方、英語においては接頭辞"to-"は時代を経て消滅してしまったようです。

According to OED, some 125 compound verbs with this element are recorded in Old English; their number declined rapidly in Middle English and disappeared by c. 1500

対訳:OED(管理人注:オックスフォード英語辞典のこと)によると、この接頭辞を持つ約125の複合動詞が古英語に記録されているが、それらの数は中英語で急速に減少し1500年頃までに消滅した

出典:Online etymology dictionary


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は最近読んだ「話すための英文法ハック100」について紹介しました。

英文法に関して、その本質を知ってより理解を深めたいという方にはおすすめの本だと思います。

こうした本を読むたびに外国語というのは本当に奥が深いと感じます。だからこそ飽くなき探求心を以て取り組めるのが、外国語学習の醍醐味かもしれませんね。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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