フランス語で「ホテル」と「ナス」の関係とは?

2023/07/12

フランス語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

単語帳は語彙を増やす上で必須のツールであることは間違いありませんが、それだけでは味気ないものです。

そんな時、私は紙の辞書を適当に捲ってみることにしています。

適当に開いたページに載っている見出し語の中から真新しい単語を探してみるのですが、意味や用法の記載ボリュームが小さい単語を探すと面白い発見があるものです。

例えば、かつて学生時代に使っていた英和辞典に"cwm"という見出し語を見つけたことがあります。

意味は「(氷河の浸食で形成された)谷」だそうですが、興味深いのは英語にしては珍しく子音字のみで構成された単語です。

実は、この単語はケルト語派のウェールズ語に由来します。ウェールズ語では文字"w"が子音としてのみならず母音「ウ」や長母音「ウー」のように発せられるため、"cwm"のような一見すると子音字だけの単語だったというわけです。

この単語を実際に目にしたり言ったりしたことはまだ無く、恐らくこれからも無いと思いますが、こうした風変わりな単語を探すのもまた一興です。

ただ未知なる単語には狙って出会うのは難しいため、無作為に紙の辞書をめくってみることがおすすめです。

ということで、今回はフランス語の単語で気になった例を調べてみたいと思います。


フランス語で「ホテル」と「ナス」の関係とは?

では当記事のタイトルにあるフランス語で「ホテル」と「ナス」の関係を調べてみましょう。

これだけでは意味が分からないと思いますが、実はこういうことです。

1.フランス語で「ホテル」※

 auberge [オーベルジュ]

※より詳細には、「(田舎にあるレストラン兼)ホテル」を指す。

2.フランス語で「ナス」

 aubergine [オベルジーン]

どうでしょう、フランス語"auberge"「ホテル」と"aubergine"「ナス」が大変よく似た形をしています。

辞書に於いて確認すると、まるで関連がある語なのではと思ってしまうくらい並んで載っています。

はたして両語に関係性はあるのでしょうか?

それぞれの語源を探ってみたいと思います。


"auberge"「ホテル」の語源とは?

まずは"auberge"の語源についてです。

The term originated in Frankish *harjabergu, composed of the elements *harjaz (“army”) and *berganą (“to shelter, to protect”),

対訳:この単語は古フランク語*harjaberguに由来し、*harjaz「軍隊」と*berganą「避難する、保護する」という要素の複合語である・・・(以下略)

(出典:en.wiktionary

フランス語は古代ローマ人の公用語ラテン語をルーツとするロマンス系の言語ではありますが、中にはゲルマン系に由来する言語も取り込まれています。

今回の例がまさにそれであり、ゲルマン系の古フランク語に由来していたということでした。


"aubergine"「ナス」の語源とは?

では"aubergine"の語源はどうでしょうか?

Borrowed from Catalan albergínia, from Arabic (al-bāinjān, “the eggplant”), from Persian (bâdengân), from (bâtengân), from Sanskrit (vātigagama, “eggplant”, literally “the plant that cures the wind”).

対訳:カタルーニャ語albergíniaからの借用、アラビア語al-bāinjān「ナス」、ペルシア語bâdengânbâtengân、サンスクリット語vātigagama「ナス」、原義は「風を治す植物」に由来。

一方で、"aubergine"は遠くインドの古語サンスクリット語に由来するそうです。

それがアラビア語圏を経由し、イスラム世界と関係の深いイベリアのカタルーニャ語を通じてフランス語に取り入れられたということですね。

ちなみに"aubergine"の語頭"au-"はアラビア語の定冠詞"al-"に由来するものであり、本来のルーツにはありませんでした。

ということで、非常に長い旅路をたどった単語だと言えます。「ナス」はインドが原産だそうでサンスクリット語に由来するというのも納得ですね。

ところで引用中にある原義「風を治す植物」とはどういうことでしょうか?

調べてみると「風」は「ふう」と読む漢方用語なのだそうです(いわゆる「かぜ」の漢字表記「風邪」は「ふうじゃ」)。

また別の資料では、「ナス」が昔は"Flatulence"「鼓腸(胃腸内にガスがたまること)」を和らげると考えられていたとの記載もありました

(参照:foodreference.com/html/arteggplant.html

いずれにせよ体によい植物だと考えられていたことが語源であったわけですね。


最後に

いかがでしょうか。今回は非常によく似たフランス語"auberge"と"aubergine"について調べてみました。

結果として全くルーツの異なる両語ではありましたが、その語源を尋ねると単語が生まれた背景を垣間見ることができて興味深いですね。

今後も興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。 

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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