フランス語「小指」と「耳」の関係とは?

2023/06/08

フランス語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

「指」は、我々の身体において手と足のそれぞれに存在します。

しかし興味深いことに、一般的に「指」と言えば手の方を指し、足に関して言及する際は「足の指」のように表現するのではないでしょうか。

一方で英語では"finger"が手の「指」を、"toe"が足の「指」を表すように手と足で異なる単語を当てています。

更に"finger"は基本的に「親指」は含まず、「親指」には"thumb"という個別の単語もあります。

また、"index finger"「人指し指」、"middle finger"「中指」、"ring finger"「薬指」、"little finger"「小指」のように親指以外でも手の「指」は区別する表現があります。これは日本語も同様ですね。

日本語でも英語でも、それだけ手の「指」が足と比べても機能や用途が豊富ということの表れでしょう。

今回は、そんな「指」に関してフランス語の単語を調べてみます。


フランス語で手の「指」、足の「指」を何という?

「指」に関する表現は、フランス語においても手と足で表現が異なるようです。

 doigt [ドワ] 「(人の手の)指」

 orteil [オルテイユ] 「足の指」

余談ですが、"doigt"はラテン語で「指」を意味する"digitus"に由来します。

この"digitus"からは形容詞"digitalis"が派生し、現代語の"digital"「デジタル」のルーツとなっています。

今の生活で欠かせない「デジタル」という語は、本来「指」に関係していたということですね。デジタル機器が専ら「指」で操作されることに由来しているのでしょう。

話を戻して、フランス語でも手の「指」には個別の名称が与えられています。

 pouce [プス]・・・「親指」

 index [アンデクス]・・・「人指し指」

 majeur [マジュール]・・・「中指」

 annulaire [アニュレール]・・・「薬指」

 auriculaire [オリキュレール]・・・「小指」

(以上、「プログレッシブ仏和辞典 2版」を参照)


"auriculaire"には形容詞の用法もある?

ところで仏和辞典を引くと、"auriculaire"という語に関して不思議な点があります。

[]1.耳の、耳状の、2.自分の耳で聴いた事柄を証言する

(参照:プログレッシブ仏和辞典 第2版)

「小指」を意味する名詞と異なり、形容詞では「耳」に関する意味を持っているのです。

フランス語では「耳」を指す語として、名詞"oreille" [オレイユ]があります。

その形容詞形が"auriculaire"というわけですが、名詞形とはつづりが大きく異なります。

また、なぜ名詞で「小指」という意味も持ち合わせるのでしょうか。

その謎について迫ってみましょう。

1.フランス語の"oreille"と"auriculaire"

「耳」に関する語として、名詞形"oreille"、形容詞形"auriculaire"と異なる語形になっていますが、語源を辿れば同じルーツに至ります。

直接の語源は、ラテン語の"auris"「耳」です。

ラテン語にはこの"auris"に、指小辞"-cula"が付いた"auricula"という語も存在していました。

指小辞とは対象の名詞や形容詞に「小さい」「少し」といったイメージを与える接辞です。

日本語に訳すなら「小耳」になるのでしょうか。

この"auricula"[アウリクラ]と発音されていたのが時代を経るとつづりや音が縮まって、"oricla" [オーリクラ]となります。

フランス語では更に音が縮まったり変化したりした結果、子音"-c-"も消失し"oreille" [オレイユ]という語形に落ち着きました。

一方で形容詞形"auriculaire"は、ラテン語の"auricularis" [アウリクラーリス]から派生した語ですが、名詞形のようにつづりが縮まったり変化したりすることも無く、元の形をほぼ維持しました。

形容詞に比べて使用頻度の高い名詞の方が、つづりや音の変化も大きかったのかもしれませんね。

2."auriculare"が「小指」を意味するわけとは?

語源の面で見ても「耳」にルーツを持つ"auriculare"がなぜ「小指」を意味するようになったのでしょうか。

フランス語版Wikipediaによれば以下の解説が見つかります。

Le terme auriculaire désigne ce qui a rapport à l'oreille, c'est pourquoi ce cinquième doigt porte ce nom car c'est le seul dont la taille permet l'introduction dans l'oreille. On l'appelle également petit doigt parce que c'est le plus petit des cinq doigts de la main.

対訳:auriculaireという語は「耳に関する」という意味ですが、唯一耳の中に入るサイズの大きさであることから小指を指す語にもなりました。最も小さい指であることからpetit doigt「小指」とも言われます。

(参照:fr.wikipedia

確かに、耳をふさぐという場合は別にしてちょっと耳の中をすっきりさせようとする際には耳の穴をほじることもあるでしょう。

その場合に適しているのが最もサイズの小さい「小指」だから、というのが「耳」に関する形容詞"auriculare"が「小指」という意味に転じた理由だったのですね。


最後に


いかがでしたでしょうか。

今回は、フランス語の"auriculare"「小指」という語について調べてみました。

ルーツは「耳」に関する語であり今でも形容詞の用法では「耳」を意味する一方で、そのサイズに着目して「小指」という意味も持っているというわけでした。

日本語に訳せば「耳()指」のようになるでしょうか。「小指」に対するイメージが言語によって異なるという興味深い例ですね。

今後も興味深い発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。

Translate

このブログを検索

プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

お問合せフォーム

名前

メール *

メッセージ *

QooQ