ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
英語以外のヨーロッパ各国語を学んでいると、ほとんどの言語で名詞における性の区別が避けて通れません。
現代英語では、三人称単数の代名詞("he"または"she")くらいしか明確に性を区別しませんが、イタリア語やフランス語の2性(男性、女性)やドイツ語の3性(男性、女性、中性)など性の区別が一般名詞、固有名詞にも存在します。
やっかいな名詞の性の話
名詞の性は、自然性と一致するもの(例えば「父親」は男性名詞・・・等)は分かりやすい一方で、ほとんどの物事は性を持たないので個別に覚えておく必要があります。
名詞の性を覚える際に注意しておくことは、以下3点ではないでしょうか?
1.同じ物事でも言語によって性は異なる
1つ目は、同じ物事でも言語によって異なる性を当てている事です。
例えばドイツ語で"Sonne" [ゾンネ]「太陽」は女性名詞、"Mond" [モーント]「月」は男性名詞です。
ところが、フランス語の場合"soleil" [ソレイユ]「太陽」が男性名詞、"lune" [リュヌ]「月」が女性名詞であり、ドイツ語とは真逆の関係となります。
ちなみに、「太陽」を中性名詞として扱う言語もあります(例チェコ語"slunce" [スルンツェ])。
複数言語を学ぶ際には注意しなければなりませんが、言語によって性が異なるのはその言語を用いる人々によって見方や考え方などの違いが表れているようで面白くもあります。
2.派生語・複合語になると性が変わる
また、派生語や複合語になると性が変わる場合もあるので注意が必要です。
例えばドイツ語で"Woche" [ヴォヘ]「週」は女性名詞ですが、"Mitwoch" [ミトヴォホ]「水曜日」は男性名詞です。
"Mitwoch"は、"mit"「真ん中」+ "woche"「週」の複合語で、「(日曜始まりで)週の真ん中」=「水曜日」と表現する面白い例だと思います。
他の曜日(例"Montag" [モンターク]「月曜日」等)が全て男性名詞のため、「水曜日」もそれに合わせて男性名詞にしたのではないでしょうか。
3.性によって意味の異なる単語がある
更に同一言語の中において、ある単語が性によって異なる意味になる場合もあります。
そもそも名詞の性は、名詞を修飾する冠詞や形容詞の形と密接に関係します。
上で挙げたフランス語の「太陽」「月」を例にすると以下の通りです。
「太陽」:le soleil [ル ソレイユ]
「月」 :la lune [ラ リュヌ]
単語の先頭"le"または"la"がフランス語における定冠詞であり、"le"が男性名詞の単数形につく形、"la"が女性名詞の単数形につく形というわけです。
そのため、性をしっかり把握しておかないと正しい冠詞や形容詞を修飾できず結果的に見当違いな意味の表現になってしまう可能性もあります。
性で意味が異なるフランス語単語3選
ということで何かとやっかいな名詞の性ですが、今回はフランス語において男性名詞か女性名詞かで意味が異なってしまう単語を3つ紹介します。
1.Tour [トゥール]
フランスの首都パリにあるエッフェル塔は主要観光名所の1つだと思いますが、フランス語では"La Tour Eiffel"と表記します。
またフランスを中心に開催される自転車ロードレースに、トゥール・ド・フランスがありますが、これはフランス語で"Le Tour de France"と表記します。
見ての通り、どちらも"Tour"という名詞がありますが前につく冠詞が異なります。
Le tour [ル トゥール]「一周」←男性名詞
La tour [ラ トゥール]「塔」 ←女性名詞
どちらもフランスを代表する"Tour"ですが、その性を誤ると見当違いの意味になってしまうので要注意ですね。
2.Crêpe [クレープ]
フランス発祥の料理は多くありますが、日本でも広く親しまれているものにクレープがあります。
日本では特に生クリームやアイスがくるまれたものというイメージですが、現地フランスでは元々そば粉を焼いた薄いパンケーキ(ガレット)に端を発します。
この「クレープ」はフランス語で"la crêpe" [ラ クレープ]、女性名詞です。
これが"le crêpe" [ル クレープ]、つまり男性名詞となると「縮緬(ちりめん。絹織物の一種)」を意味します。
Le crêpe [ル クレープ]「縮緬」←男性名詞
La crêpe [ラ クレープ]「クレープ」 ←女性名詞
そもそもこの「縮緬」が"crêpe"の本来の意味であったのが、薄く焼かれた生地の見た目から食べ物の「クレープ」に派生したようです。
そうして派生した同音異義語が、性を変えることで区別されるというのは面白いですね。
3.Poste [ポスト]
日本で郵便局や郵便ポストのイメージは「赤色」ですが、フランスでは郵便局の看板やポスト、郵便宅配車は「黄色」です。
郵便局はフランス語で"La poste" [ラ ポスト]と言います。"La"が付く通り、女性名詞です。
これが男性名詞"Le poste" [ル ポスト]では、「地位、要職」を意味する事となります。
Le poste [ル ポスト]「地位、要職」←男性名詞
La poste [ラ ポスト]「郵便局、郵便」 ←女性名詞
日本語でも「ポスト」は郵便ポスト※だけでなく、「地位、要職」を指す語としても使われるケースがありますね。
※ただし、フランス語"La poste"には「郵便ポスト」という意味はないので注意です。
郵便ポストは、"boîte aux
lettres" [ボワトォ レトル]です。
フランス語"poste"は、ラテン語で「置く」を意味する動詞"pono" [ポーノー]の過去分詞形"positus" [ポシトゥス]がイタリア語を経由して取り入れらました。
ラテン語の過去分詞形は男性形"positus"、女性形"posita"・・・のように性で語尾の形が異なっていました。
イタリア語もやはり、男性形"posto" [ポスト]、女性形"posta" [ポスタ]と形が異なります。
前者が「場所、地位」という意味で、後者が「郵便」という意味です。
ルーツを辿ると性で語尾の形が異なっていたものの、フランス語では男性・女性のどちらも"poste"と同形になったということでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は「やっかいな名詞の性の話」として、フランス語で性により意味の異なる単語を取り上げてみました。
こうした例は性を区別するドイツ語やスペイン語など他の言語でもやはり存在します。
やっかいな名詞の性の区別ですが、あえて違いを探してみる等「楽しんで」学んでいきたいですね。