ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
当ブログではこれまで度々、同音異義語(音が同じで意味が異なる)や同綴(てつ)異義語(つづりが同じで意味が異なる)に焦点を当ててきました。
今回も新たに同綴異義語を発見したので、当記事にて取り上げたいと思います。
英語"wax"はどんな意味?
今回取り上げる単語は英語"wax"です。
「ワックス」というカタカナ語でも日常よく使われ目にする単語ですね。
今回、改めて英語"wax"の意味を調べてみましょう。
[名詞]
1 みつろう(beeswax);ろう;ろう状物
2(靴屋が糸につける)ろう;封ろう;ワックス
3 耳あか(earwax)
4 ((略式))レコード
5 思いのままになる人〔物〕
[動詞]
1(…に)ろう〔ワックス〕をすり込む〔塗る、引く〕、(…を)ワックスで磨く、(…を)ろうで固める;〈脚などに〉ろうを塗って脱毛する
2 ((略式))〈曲を〉レコード録音する
(参照:kotobank.jp/ejword/wax「プログレッシブ英和中辞典(第4版)」の解説より)
基本的には、ロウやワックスおよびその形状に関連していますが「レコード」なんていう意味もあるとは驚きです。
"wax"の語源は、さかのぼると印欧祖語の*wokso-「ロウ、ワックス」に行きつきます。
「レコード」の意味はどこから派生したのでしょうか?
"wax"が何故「レコード」を意味する?
"wax"が「レコード」を意味する理由はOnline etymology dictionaryによると以下のように解説されています。
Slang for "gramophone record" is from 1932, American English (until the early 1940s, most original records were made by needle-etching onto a waxy disk which was then metal-plated to make a master).
対訳:スラング「蓄音機のレコード」は1932年から、アメリカ英語で(1940年代の初めまで、レコード原盤はロウ製のディスク表面に針で溝をつけた後に金属加工を施してマスターディスクを制作していました)
(出典:Online
etymology dictionary)
初期のレコードの材料がロウであったことから、"wax"の用法に「レコード」や「レコード録音する」といったものがあるんですね。
もう1つの"wax"の用法とは?
実は英語"wax"には、更に他の意味もあります。
それが以下引用にある動詞としての用法です。
[動詞]
1〈勢力・感情などが〉増大する、大きくなる;〈月が〉満ちる
2 ((文))(…に)なる
(参照:kotobank.jp/ejword/wax「プログレッシブ英和中辞典(第4版)」の解説より)
「増大する」や「月が満ちる」というのは、一般にイメージする「ロウ、ワックス」の意味とは全く関係がなさそうです。
「増大する、満ちる」を意味する"wax"の語源を調べてみましょう。
from Proto-Germanic *wahsan (中略), from PIE *weg-, extended form of root *aug- (1) "to increase."
対訳:ゲルマン祖語*wahsan(中略)、印欧祖語の語根*aug- (1)「増大する」の拡充形※*weg-に由来
※訳者注:現代英語の進行形に相当するような語形
(出典:Online
etymology dictionary)
「ロウ、ワックス」を意味する"wax"とは語形が同じでも、ルーツとなった語は異なることが分かりました。
英語では「増大する」という意味では"grow"や"increase"に取って代わられていますが、"waxing moon"「満ちていく月、上弦の月」という表現で現代でも残っています。
間違っても"waxing moon"「ロウでできた月、ワックス掛けする月」などと捉えないようにしましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"wax"について調べてみましたが、語源の異なる2つの用法があることが分かりました。
①「ロウ、ワックス」という意味(印欧祖語*wokso-がルーツ)。
②「増大する、月が満ちる」という意味(印欧祖語*weg-がルーツ)
また①には、その材料がロウであったことから「レコード」という意味のスラングもあることが分かりました。
語源までさかのぼると意味の背景やルーツの違いを知ることができますね。
今後も新たな発見があれば当ブログで取り上げていきたいと思います。