ロシア語「90」の語源を調べました!

2022/02/28

スラヴ諸語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

先日の記事で、ロシア語における数字「40」の表現についてまとました。

その時に紹介しきれなかった「90」の表現について、今回は取り上げたいと思います。


【前提】ロシア語の表記について

英語やフランス語、ドイツ語などで用いられる"a, b, c…"と言ったラテン文字(いわゆるローマ字)とは異なり、ロシア語はキリル文字で表記されます。

キリル文字は日本では、顔文字で一部がよく知られています。

例えば (゜д゜)で口の部分はキリル文字「デー」が使われています。これはラテン文字の"D"に相当します。

キリル文字には基本的に相当するラテン文字で書換えすることができます。当記事では、読みやすさの観点からラテン文字に置き換えてロシア語を紹介します。


ロシア語の数字表現

ロシア語で10の倍数は基本的に「n×10」の形で言うことができます。

ベースとなる10はdesjat[デースヤチ]と言い、20なら2×10、30ならば3×10…と言った具合です。

 20 dva-dcat’ [ドヴァーツァチ]

 30 tri-dcat’ [トリーツァチ]

 50 pjatʹ-desjat [ピヤチデスヤート]

 60 šestʹ-desjat [シスチデスヤート]

 70 sémʹ-desjat [セーミデスヤト]

 80 vosemʹ-desjat [ヴォーシミデスヤト]

それぞれ - の後が×10を示す接尾辞です。desjat[デースヤチ]「10」と形が似ていることが分かります。

ところが「40」と「90」ではn×10の法則が当てはまりません。

「40」はロシア語で"sorok" [ソーラク]であり、この特別な形は毛皮の単位に由来するということでした。

(挿入)ブログカード


ロシア語で「90」を何と言う?

「90」はロシア語で"devjanosto" [ヂヴヤノースタ]と言います。

単に9の場合はdevjatʹ[ヂェーヴヤチ]と言うので、前半部分"devja-"が「9」を示していることが分かります。ですが、後半部分は他の位の語尾 -dcat-desjat とは異なります。

今回は"-nosto"という語尾を中心に調べてみたのですが、残念ながらはっきりした背景は分かっていないようです。

無料で利用できるロシア語のオンライン辞典の解説を紹介します。

(サイトはロシア語につき、便宜上日本語訳で(キリル文字はラテン文字化して)引用します)

1314世紀まで、全てのスラヴ語では共通してdevjatdesjatという形が使われていました。14世紀から恐らくdevjat do sta100の前の9」(devjat desjatkov do sotni100の前の10個の9」から)という語が、新しい単語として取って代わりました。子音の異化により、доはноに変化しました。

(参照:lexicography.online/etymology/д/девяносто

当初の形はdevjat「9」とdesjat「10」で、他と同じ「9×10」の考え方であったようです。

ところが「90」になると何故か「百の前の」という修飾語が付いて、現在の形式になったということになります。

数が増えてきたので百から遡って考えた方が早い、ということでしょうか。

このような表現はロシア語と同じ東スラヴ語群(ウクライナ語など)には見られるものの、西スラヴ語群(ポーランド語やチェコ語など)や南スラヴ語群(スロヴェニア語など)では見られません。

東スラヴに限って変化した背景もやはり明確ではないようです。


昔の10%の税金に由来する?

背景が明確になっていない為か、この単語の理由を推測した説はいくつかあるようです。

世界最大のQAサイト、Quoraで示されていた説を引用して紹介します。

“devyanosto” (девяносто) is what’s left of a hundred (сто) after taxes. The word “devyanosto” appeared in the Russian language at the time when the Church of the Tithes was built by the order of Grand Prince Vladimir the Great between 989 and 996.

In order to pay for the construction, Prince Vladimir instituted a 10% tax (tithe) on all earnings, thus turning one hundred of anything into ninety.

対訳:「90」の語源は100sto)から税金を引いた残り、という説です。devjanostoという語は、989年から996年の間にウラジーミル大王の命で什一聖堂が建てられたときにロシア語の中に登場しました。建設費を賄うためにウラジーミル大王はすべての収入に10%の税金(十分の一税)を課し、そのため100から税金を引いた残りが90となりました。

(参照:https://www.quora.com/Why-do-we-say-nine-but-hundred

什一聖堂というのは現在ウクライナの首都キエフに建てられた現存しない教会だそうです。「什一」とはある物品の十分の一の部分を指し、当時の税制「十分の一税」によって対訳にある通り、10%(十分の一)が教会建設の税金に当てられたことに由来する、という説です。

この説は、"devjanosto"が"devjanosto"の合成語だという考えに基づきます。

真ん中の"no"は現代ロシア語で接続詞「しかし」(英"but"に相当)する為、「100、しかし(実際は税金を引かれて)90」というイメージでしょうか。

興味深い説ですが、上記ロシア語辞典サイトの引用とは単語の登場年代が異なることや十分の一の献金はウラジーミル大王の財産そのものに関してだったとのことから民間語源的な説の域を出ないかもしれません。


最後に

いかがでしたでしょうか。前回のロシア語「40」に続き、今回は「90」について調べました。

共通のルーツから発展した諸言語であっても、地域によって異なる表現に至っているというのは興味深いですね。複数の言語を学ぶ醍醐味だと思います。

長い歴史を持つ言語なので、その背景を明らかにするのは容易ではありませんが、調べるだけでも十分な外国語学習になると思います。

今後も、さまざまな視点で以て語学に取り組んでいければと思います。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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