超高層ビルが擦るのは天? それとも雲?

2022/02/01

単語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

言葉というのは人類の歴史の中で発展してきた長い歴史を持つものですが、新たな技術や概念を表すために今でも新しい言葉が生み出されています。

今回は、比較的時代の新しい言葉である超高層建築物(ビル)を表す単語についてまとめてみたいと思います。


英語"Skyscaper" [スカイスクレーパー]

超高層ビルを英語では"Skyscraper"と言います。

世界で初めての高層ビルはアメリカ・シカゴで1884年に竣工したホーム・インシュアランス・ビルだそうですが、4年後の1888年には高層ビルを指す言葉として"Skyscraper"が用いられたようです。

very tall urban building, 1888, in a Chicago context, from sky (n.) + agent noun of scrape (v.).

対訳:非常に高い都市建築物、1888年、シカゴでの文脈に見られる、sky(名詞)「空」+scrape(動詞)「擦る」の動作主名詞形から。

(出典:Online etymology dictionary

動作主名詞とは、「~する人(または物)」という機能を持った名詞で代表的な接尾辞が"-er"です。

つまり"Skyscraper"とは"Sky"「空」を"scraper"「擦る物(建築物)」ということになります。

ただ、超高層ビルの意味としては1888年が初出ながら単語自体はそれ以前から異なる意味で使われていたようです。

Used earlier for "ornament atop a building" (1883), "very tall man" (1857), "high-flying bird" (1840), "light sail at the top of a mast" (1794), and the name of a racehorse (1789).

対訳:かつては「建物の上の装飾」(1883)、「非常に背の高い人」(1857)、「高く飛ぶ鳥」(1840)、「マストの先端のライトセイル」(1794)、また競走馬の名前(1789)を意味していました。

(出典:Online etymology dictionary

単語の構成から、元々は高い部分にある物を指していたようですが競走馬の名前でもあったというのは面白いです。

空を切るほどの速さで走る馬、という意味が込められていたのかもしれませんね。


日本語「摩天楼」「凌雲閣」

"Skyscraper"を訳した日本語としては「摩天楼」が挙げられます。

漢字の「摩」は「摩擦」や「按摩」という熟語で用いられていることからも分かるように、「する、こする」という意味を表します。

他には「近づく、せまる」という意味もあり、摩天楼の「摩」はこれが該当します。

つまり、天にせまりそうな(くらい高い)楼閣ということになります。

(参照:https://www.weblio.jp/content/%E6%91%A9

また、摩天楼は一般名詞として高層ビルを指しますが、かつて日本には「凌雲閣(りょううんかく)」という建物が存在していました。

東京・浅草は12階建て、大阪・キタは9階建てでどちらも明治20年代前半の竣工です。

当時および後世の文学作品でも度々取り上げられており、特に東京の凌雲閣は最近話題の漫画「鬼滅の刃」にも登場していました。

この「凌雲閣」は、「凌」が「しのぐ、のしあがる」という意味の漢字からも分かるように、雲をもしのぐ(くらい高い)楼閣ということになります。

摩天楼にしろ、凌雲閣にしろ、「天」や「雲」という漢字から高さのイメージが明確ですね。


ドイツ語"Wolkenkratzer" [ヴォルケンクラッツァー]

アメリカに端を発した"Skyscraper"は、その後ほかの地域でも発展していく中で単語が借用または母国語に翻訳されていきました。

その中の1つがドイツ語の"Wolkenkratzer"です。

この単語は"Wolken"と"kratzer"の複合形ですが、"Skyscraper"の翻訳形と考えられます。

"Wolken"は「雲」、"kratzer"は動詞"krazten"「引っかく」の動作主名詞形であることから、雲を引っかく(くらい高い)建物という意味ですね。

英語からの翻訳とはいえ、"Sky"「空」が"Wolken"「雲」に、"scrape"「こする」が"kratzen"「引っかく」というように微妙に異なっているのは面白いですね。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は超高層ビルに関する単語をまとめてみました。

いずれも非常に高いところをイメージすることができる単語を用いながらも「天」、「空」、「雲」・・・用いる単語が異なっているのは面白いですね。

ベースになった単語の借用や翻訳とはいえ、取り入れる側のイメージや語感から好まれる表現が異なってくるのだと思います。

今後もいろいろな言語を比較しながら楽しく外国語学習をしていきたいですね。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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