チェコ語では飲み物と言えば「ビール」を指す!?

2021/11/04

スラヴ諸語

t f B! P L

ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

新型コロナウイルスの影響で昨年以来断続的に続いていた緊急事態宣言は、9月末で全国一斉に解除となりました。

飲食店への、とりわけ酒類提供に関わる自粛要請は宣言解除後も残りましたが、それも10月下旬から解除されています。

2021年も早いもので年末が近づいてきましたが、忘年会などイベントの多い時期でもあり、飲食店にとってはこれからといったところでしょうか。

とはいえ引き続き感染拡大には十分に気を付けて過ごしたいものですね。

さて、忘年会などで欠かせないものと言えば、やはり「ビール」だと思います。

私は体質的にアルコールにそれ程強くはありませんが、それでも集まって「ビール」を飲みながらの歓談は楽しいものです。


「ビール」の消費量世界一は?

大学時代、ドイツ・オーストリア・チェコの3カ国を周遊したことがありました。

あれが私にとって初めての訪欧だったのですが、驚いたのは現地のビールの価格とその量です。

うろ覚えですが、当時チェコの首都プラハで特大のジョッキ1杯のビールが日本円にして百数十円で飲むことができました。

街に出れば昼間はもちろんのこと朝からお店のカウンターやテラス席でビールを飲んでいる現地の人の姿をよく見ました。安いから飲むのかみんな飲むから安いのか、いずれにせよ日本では見られない光景に衝撃を受けたのを覚えています。

キリンホールディングスのHPには「国別一人当たりビール消費量」というデータがありますが、2018年および2019年の2年連続でチェコが1位の座についています。

(参照:kirinholdings.com/jp/investors/library/databook/beer_country/

チェコ人のビール好きはデータからも明らかですね。

ビールと言えばドイツのイメージがありましたが、一人当たり消費量では2018年の3位、2019年の4位という結果でした

ちなみに2位は20182019年ともにオーストリアでした。私が初のヨーロッパで周遊した3カ国はビール大国だった、というわけです。


チェコ語で「ビール」を意味する"pivo"、その語源は?

私が周遊した3カ国を言語で比べてみた場合、ドイツ・オーストリア両国はドイツ語が公用語ですが、チェコの公用語はチェコ語です。

ゲルマン語派であるドイツ語に対してチェコ語はスラヴ語派に属し、ロシア語やポーランド語などと同じグループに含まれます。

ゲルマン語派もスラヴ語派も、いずれにせよそのルーツは印欧語族という先祖に端を発するので元は同じと言えるのですが、枝分かれした現代語では乖離も大きく語彙にはほとんど類似性がありません。

少しばかり勉強していたドイツ語はともかくチェコ語は事前に旅行会話をかじった程度だったので、現地で実際にチェコ語を聞き、話し、通じたときは喜びもひとしおでした。

ビールのことをチェコ語で"pivo" [ピヴォ]と言います。これに英語"please"に相当する"prosím" [プロシーム]を付けて、"Pivo prosím!" でビールを注文しました。これが、私が現地で使ったあいさつ以外の限られたチェコ語です。

何とも可愛らしい音の響きを持つ"pivo"ですが、この単語の語源を尋ねると面白いことが分かります。

チェコ語"pivo"は、以下の成り立ちによることが分かっているそうです。

 "pivo"(チェコ語)←"*pivo"(スラヴ祖語)←"*phiwom"(印欧祖語)←"*peh-"(語根)

参照:wiktionary.en

そして、この"*peh-"は印欧語において「飲む」という意味の語根(基本的な意味を持つ最小の単位)だということが分かっています

飲み物と言えばビール!といった感じでしょうか。

語源の面から見ても、チェコがビール消費大国なのが頷けます。


【参考】"Beer"の語源もやはり「飲む」から?

今回は旅先での光景が印象的だったチェコでの経験からチェコ語にフォーカスしましたが、英語"beer"の語源も一説には「飲む」との関連が伺えます。

Probably a 6c. West Germanic monastic borrowing of Vulgar Latin biber "a drink, beverage"

対訳:恐らく俗ラテン語biber「飲み物」の西ゲルマン語派の修道士の借用語

出典:Online etymology dictionary

この俗ラテン語"biber"もまた、そのルーツを辿ると"pivo"と同じ"*peh-"に至ります。

 "biber"(俗ラテン語)←"bibō"(ラテン語:動詞「飲む」)←"*pibō"(イタリック祖語)←"*pípheti"(印欧祖語)←"*peh-"(語根)

この説を見る限り、「ビール」というのは古くからヨーロッパのとりわけゲルマン系やスラヴ系の人々にとっての飲み物として大きな存在だったのかもしれませんね。

ただ"beer"の語源については諸説あり、他にはゲルマン祖語"*beuwo-"「大麦」に由来する説もあることを申し添えておきます。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は「ビール」の語源について紹介しました。

いわゆるアフターコロナに向けて生活が少しずついつも通りに戻っていくように感じられますが、海外へも再び気軽に旅行できるようになればいいなと思います。

その際にはぜひチェコへ飛び、また現地でビールを楽しみたいと思います。

Translate

このブログを検索

プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

お問合せフォーム

名前

メール *

メッセージ *

QooQ