ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
外国語を学んでいると、まるで日本語の音のように聞こえる単語に出くわすことがあります。
語呂合わせのようにして単語を覚える助けとしてもよし、外国語に興味を持つきっかけとするもよし、ということで今回はドイツ語における「日本語のように聞こえる」興味深い単語を挙げてみます。
"Ameise" [アーマイゼ]
童謡の「ほたるこい」には、「こっちのみずはあまいぞ」という歌詞がありますが、ドイツ語には「アーマイゼ」と聞こえる単語があります。
ドイツ語で「蟻」を意味する単語です。
蟻は甘いものを好むイメージがありますが、ドイツ語で"Ameise" [アーマイゼ]というと、童謡よろしく蟻さんを呼び寄せているような気持ちになります。
"Ameise"の語源とは?
この単語の語源は何でしょうか?
同じゲルマン系の言語である英語では、"ant"「蟻」です。
先頭の母音"a"のみ同じですが、あまり似ていません。
ドイツ語版wiktionaryによると、"Ameise"の語源は以下のように解説されています。
seit dem 8. Jahrhundert bezeugt; mittelhochdeutsch āmeize, althochdeutsch āmeiza, westgermanisch *ā-mait-jōn „Ameise“, wie auch englisch ant, mittelniederländisch āmete, Ableitung von *ā- „ab, weg“ (vergleiche a-, zweites Stichwort) und *maitanan „schneiden“ (vergleiche Meißel), wahrscheinlich bezogen auf den aus eindeutig mehreren Teilen bestehenden Körper.
分離を表す接頭辞"a"と、「切る」を意味する"*maitanan"が組み合わさった形が由来だそうです。「切り離された(もの)」というイメージでしょうか。
確かに「蟻」を始めとした昆虫は、頭部、胸部、腹部と体が大きく3つのパーツから構成されていますが、その姿が「切り離され」ていると考えられたのかもしれませんね。
また上記引用においても言及されている通り、あまり形の似ていない英語"ant"も同源だということが分かりました。
こちらは"Online
Etymology Dictionary"で以下のように解説されています。
c. 1500 shortening of Middle English ampte (late 14c.), from Old English æmette "ant," from West Germanic *emaitjon (source also of Old High German ameiza, German Ameise) from a compound of Germanic *e-, *ai- "off, away" + *mai- "cut," from PIE root *mai- (1) "to cut" (see maim). Thus the insect's name is, etymologically, "the biter-off."
やはり、接頭辞"a"と「切る」という意味の"*mai-"に由来しているとのこと。
ただし英語においては短縮されて、今の"ant"という形に落ち着いたようですね。
ちなみに興味深いのは、"insect"「昆虫」という英単語の語源です。
こちらはラテン語に由来する単語ですが、語源は接頭辞"in"と「切られた(もの)」を意味する"sect"からと考えられています。
ラテン系とゲルマン系、ルーツは異なれど同じ考え方から「蟻」や「昆虫」を命名しているということですね。
"Rahmen" [ラーメン]
少し前の話ですが、テレビCMで「ラーメン構造」という用語を見聞きすることがありました。
それは住宅メーカーのセキスイハイムさんのCMで、残念ながら食べ物のラーメンには関係ありません。
ドイツ語で「枠、フレーム」といった意味の単語です。
ちなみに、セキスイハイムさんは、社名の「ハイム」にもドイツ語"Heim"「家」が使われています。
"Rahmen"の語源とは?
英語版wiktionaryによると、「支え」を意味する単語がルーツのようです。
From Middle High German ram, rame f (“column, frame”), from Old High German rama f (“support”), from Proto-Germanic *ramō (“prop, frame”), probably from Proto-Indo-European *rem(w)- (“to rest, prop up; a support, base”).
また調べたところ、同じゲルマン系の言語・英語には同源の単語は残っていないようでした。
もしかすると、英語"frame"「枠、フレーム」という単語がドイツ語では何らかの理由で語頭の"f"だけ脱落したのでは?とも考えたのですが、"frame"とはルーツが異なるようです。
"Tisch" [ティッシュ]
ここで、ドイツ語の語彙を増やすための語呂合わせを一つ。
『机にティッシュがある』。
ドイツ語で「ティッシュ」と聞こえる"Tisch"は、「机、テーブル」を意味する単語です。
ただしこの語呂合わせには欠陥があります。
ドイツ語の名詞は「性」も覚えなくてはいけないのですが、この文では「性」までは分からないのです。
"Tisch"は男性名詞です。覚える際には男性形の定冠詞"der" [デア]も一緒に、"der Tisch"と覚えたいですよね。
ということで、少し無理やりですが以下のような語呂合わせはいかがでしょう?
『ではティッシュを、机に』。
"Tisch"の語源とは?
ドイツ語版wiktionaryによると、語源について以下のように解説されています。
von mittelhochdeutsch tisch → gmh, althochdeutsch tisc → goh, belegt seit dem 8. Jahrhundert, das vom lateinischen discus → la („Schüssel“) stammt, das wiederum aufs griechische δίσκος (diskos) → grc („Scheibe“) zurückgeht.
ゲルマン系のドイツ語には珍しく(?)、ラテン語に由来するようですね。またそのラテン語もギリシャ語にルーツがあるそう。
ラテン語"discus"から、英語"disc"や日本語「ディスク」が生まれています。
また"Tisch"の原義についても興味深い解説がありました。
In seiner ursprünglichen Bedeutung bezeichnete das Wort kein Möbelstück im heutigen Sinn, sondern kleine hölzerne Platten, die einem einzelnen Esser zugleich als Tisch und Teller dienten.
現代ドイツ語では「机、テーブル」という意味を得ましたが、もともとは家具を指す言葉ではなく、一人前の木製プレートを指していたとのこと。
そういえば、ドイツ語では「デザート」のことを"Nachtisch" [ナハティッシュ]と表現します。
「後の」を意味する接頭辞"nach"がついた単語ですが、直訳して「後の机」だと意味が分かりません。
原義の「後のプレート」と捉えると、なるほどメイン(ディッシュ)等を食べた後に提供されるもの=デザートという意味がよりはっきりとしますね。
"Huhn" [フーン]と"Hahn"[ハーン]
最後は、2つまとめて紹介します。
何だか気のない返事をされたように聞こえる単語ですね。「フーン」に、「ハーン」。
つづりもよく似たこの単語は、"Huhn"が「雌鶏(メスの鶏)」で"Hahn"が「雄鶏(オスの鶏)」を意味します。
ところで、"Huhn"は性別に注意しなければなりません。
意味の「雌鶏」から考えると女性名詞?と考えてしまいますが、実際は中性名詞です。
覚える際は、中性形の定冠詞"das" [ダス]と共に"das Huhn"と覚えましょう。
一方、「雄鶏」の"Hahn"は意味の通り男性名詞となります。
"Huhn"と"Hahn"の語源は?
この単語のルーツも確認しておきましょう。
ドイツ語版wiktionaryに以下の解説があります。
・"Huhn"
seit dem 9. Jahrhundert belegt; mittelhochdeutsch huon, althochdeutsch huon, hōn, zu Kontinentalwestgermanisch *hōnaz (Plur. *hōniziz),(中略)Vṛddhibildung zu *hanan- ‚Hahn‘;
"Huhn"はどうやら、"Hahn"という単語の母音交代によって生まれたようです。
引用文中の"Vṛddhi"という、何と発音してよいかも分からない単語が母音交代を示唆しています。
・"Hahn"von germanisch *hanan- → gem "Hahn; Sänger", aus indogermanisch *kan- → ine "klingen, singen, tönen", vergleiche lat. canere → goh "singen";
対して、"Hahn"の語源はラテン語で「歌う」を意味する動詞"canere"とも関連性があるそうです。
鶏の特徴的な鳴き声は、歌っているようだと昔は感じられたのかもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、日本語のように聞こえるドイツ語を5つ紹介しました。
響きが印象的だと、それだけでも頭に残りやすくなりますよね。
ドイツ語、とりわけ名詞の場合は単語だけではなく「性」も区別しなくてはならないのが厄介ですが、まずは音に着目していろいろな単語を調べてみるのも面白いかもしれませんね。