「ワクチン」の由来は?語源を元に解説します!

2021/02/04

単語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

前回に続いて、今回もコロナウイルスに関連した単語について記事にしたいと思います。

依然コロナウイルスは感染拡大を続けておりますが、2020年末にイギリスやアメリカでコロナウイルスワクチンの緊急使用承認が相次ぎ、既にワクチンの接種も始まりましたね。 

ワクチンを接種したから絶対に大丈夫とは言えませんし、また人によっては副反応リスクも懸念されるところですが、少なくともコロナウイルスの克服に向けた前進であることは間違いありません。

今回は、「ワクチン」という単語について調べてみようと思います。


「ワクチン」という単語の由来とは?

「ワクチン」という言葉は、ドイツ語"Vakzine"[ヴァクツィーネ]が日本にもたらされて使われるようになった外来語です。

医療・医薬に関連する用語は、"Karte"「カルテ」、"Röntgen"「レントゲン」などドイツ語由来が多いですね。

ただし、"Vakzineにも由来となった単語があり、更に遡るとラテン語"vaccinus"[ワクキーヌス]にたどり着きます。

ドイツにおいても日本語同様、ラテン語からもたらされた外来語という位置づけだったのですね。

そこで今度は、ラテン語"vaccinus"について調べてみましょう。


ラテン語"vaccinus"は「あの動物」を指していた! 

調べたところ、"vaccinus"は形容詞で「牝牛の、牝牛由来の」といった意味があるそうです。

この形容詞は"vacca"[ワクカ]という、「牝牛」を意味する名詞から派生した単語です。

ちなみに、日本語を見ても分かる通り、"vacca"が指すのは牛の中でも、メスの牛に限定されます。そのため、オスの牛「牡牛」を指す場合は、別の単語が用いられます。

「牡牛」はラテン語で、"taurus"[タウルス]です。現代、"taurus"は十二星座のおうし座を指す言葉として使われていますね。


「ワクチン」と「牝牛」の関係とは?

「ワクチン」の語源にたどり着きましたが、もともと「雌牛」を意味する単語から「ワクチン」というのはどういうことでしょう?

これは、世界で初めてワクチンが開発された歴史を振り返ると見えてきます。

その昔、天然痘を引き起こすウイルスが存在し、また流行していました。発症すると肌に水痘(水ぶくれ)などを引き起こす病気です。

あるとき、イギリスの医師エドワード・ジェンナーという人物が、この天然痘に関して次のような噂を耳にしました。

牛の世話などをする人が牛痘(牛を由来とする感染症。天然痘のような水痘を発症する)に掛かった場合、その後は天然痘に掛からないというものです。

天然痘は古くから存在していたウイルスで、当時は天然痘患者の膿を健康な人間に少量接種して免疫を獲得させる方法が予防策でしたが、安全性の面で問題がありました。

これに対し、ジェンナーは牛痘患者の膿を使えないかと考え実験を行います。

結果、牛痘を接種することで天然痘の免疫が獲得できたということが分かり、これまでよりも安全な予防法として確立され、天然痘の撲滅に大きな効果を発揮したのです。

この時、ジェンナーの実験に貢献した牛痘の宿主が「牝牛」であったことから、"vacca"「牝牛」が由来となり、「ワクチン」を意味する単語として使われるようになったということですね。


【参考】ラテン語をルーツに持つ言語の「牝牛」

ちなみに、ラテン語をルーツに持つ言語として代表的な以下の言語では「牝牛」を何というでしょう

 イタリア語  vacca [ヴァッカ]

 ルーマニア語 vacă [ヴァカ]

 フランス語  vache [ヴァシュ]

 スペイン語  vaca [バカ]

 ポルトガル語 vaca [ヴァカ]

いずれもラテン語の形をよく残しています。また、意味もラテン語同様「牝牛」のみ指します。 

「牡牛」の場合は、ラテン語"taurus"を語源として以下の単語で表されます。

 イタリア語  toro [トーロ]

 ルーマニア語 taur [タウル]

 フランス語  taureau [トロ]

 スペイン語    toro [トーロ]

 ポルトガル語 touro [トウル]


【参考その2】実は「あの成分」は「牡牛」由来だった!?

歴史上、「ワクチン」の誕生に貢献したのは「牝牛」でした。

ではオスの方はというと、実は「牡牛」も「ある成分」の発見に役立っています。

その成分とは…、「タウリン」です。

アミノ酸の一種であり、市販の栄養ドリンクには「タウリン」を配合したものが多く存在していますね。

そんな「タウリン」ですが、ドイツ語"Taurin"[タウリーン]が日本語にもたらされました。「ワクチン」に続き、やはり医療分野におけるドイツ語の力はすごいですね。

また、「タウリン」が最初に発見されたのもドイツです。1826年にレオポルト・グメリンという教授によるものですが、この時「牡牛」の胆汁から発見されたことから、"taurus"というラテン語が用いられました。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回の記事では「ワクチン」という単語について、その由来を調べたところ「牝牛」に由来することが分かりました。

また、関連して「牡牛」についても調べた結果、「タウリン」の由来になっていることも分かりました。

ヨーロッパにはイギリス、ドイツ、フランスなど酪農が盛んな国が多く、昔から牛との関りも深かったことと思います。

とはいえ、「牝牛」も「牡牛」もどちらも医学における重要な発見に役立っているというのはすごいですね。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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